8月下旬、原発事故の被害を受けた福島県いわき市に住む子どもたちのプロ野球観戦ツアーが実施された。テレビで見ていた選手たちを前に、子どもたちは興奮を隠せなかったという。その模様を、このツアーに帯同した斉藤崇さん(TEAM iups)に、寄稿してもらった。(文=斉藤崇)(写真=アキタカオリ)
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8月21日から22日にかけて、福岡ソフトバンクホークスの細川亨選手の招待により、BunBu学院、東大UT-Aid、TEAM iupsの3団体が協力して、福島県いわき市四倉の子どもたちのための1泊2日のプロ野球観戦ツアーを行った。
「子どもたちに外で思いっきり遊んでほしい」「夏休みの思い出に、特別な体験をプレゼントしたい」こんな想いから企画された本ツアーに、私もスタッフとして参加し、子どもたちの引率を担当した。
このツアーにはいわき市立大浦小学校に通う子どもたち20人が参加した。ツアーは、所沢カルチャーパークでのBBQから始まった。お肉を食べることに夢中になる子もいれば、ボールを追いかけたり、虫取りをしたりする子もおり、それぞれが様々に楽しんでいた。
その後、西武ドームに移動し、ソフトバンク対西武の試合を観戦した。子どもたちはソフトバンク側のベンチに入り、試合前の練習を間近で見たり、選手たちと握手をしたりサインを貰ったりしていた。
皆、普段はテレビでしか見ることのないプロの野球選手たちと交流できたことがとても嬉しかったようで、試合観戦中も貰った野球帽やサインを大事そうに抱えていた。
長い長い1日を終え、子どもたちは銭湯に入った後、BunBu学院に宿泊した。元気いっぱいの子どもたちもさすがに疲れたのか、皆すぐに眠りについた。
二日目は、まずBunBu学院の子どもたちとの交流を行った。子どもたちは、福島のことや東京のことを質問し合い、お互いについての理解を深めた後、ドッジボールをして遊んだ。最初は警戒心を抱いていた子どもたちも、ドッジボールを通じていつの間にか打ち解けていた。
ツアーの最後は、平和の森公園でのアスレチックであった。子どもたちは、皆ずぶ濡れの泥だらけになりながら大はしゃぎしていた。思いきり体を動かして遊ぶ子どもたちの目はきらきらと輝いていた。
帰り際、子どもたちから「楽しかった」「またこういうツアーをやりたい」という言葉を聞くことができた。後から聞いた話によると、子どもたちはこの2日間の思い出を夏休みの作文に書いたそうだ。それぞれ印象に残っているものは違えど、きっと皆が今回のツアーで素敵な夏休みの思い出をつくることができたのではないだろうか。
子どもたちの住む地区は、津波により大きな被害を受けた場所の一つである。原発事故も重なり、思いきり汗をかいて外で遊ぶ機会はだいぶ減ってしまっただろう。今回のツアーは、子どもたちにとってとても有意義なものであったに違いない。
子どもたちには、今回ツアーに招待してもらったことへの感謝の気持ちを忘れないでほしい。そして、大きくなったとき、このようなツアーに参加したということを思い返し、自分たちには何ができるのだろうかということを考えてほしい。今回のツアーが、子どもたちにとって、そういうことを考える材料にもなれば尚良いのではないかと私は思っている。四倉の子どもたちの未来に期待したい。
・BunBu学院:http://niliabunny.com/bunbu.html
・TEAM iups:http://www.iups2010.com/
・UT-Aid:http://utaid.yu-yake.com/