2012年11月に刊行された『年収150万円で僕らは自由に生きていく』(星海社新書)を紹介する。本書は、プロブロガーのイケダハヤト氏(26)が、貧乏でも楽しく生きていくことができる「新しいライフスタイル」を提言した一冊だ。
イケダ氏は大学卒業後、サラリーマン生活を送るも、会社の通勤、時間の拘束など「お金や会社のために働いている自分」に違和感を覚え、よりやりがいが感じられる仕事を求めて、社会人3年目でフリーランスとなる。
仕事時間は朝7時から夜8時までだが、散歩、読書など自由な時間も含まれているため、「仕事」と「遊び」の境目が曖昧な生活を送っているそうだ。
現在は、自身が運営するブログ、執筆活動、企業へのコンサルティングなどで、年間500万円〜600万円と、150万円をはるかに超える収益を得ているが、イケダ氏は妻と子の3人家族のため、自身の年収を家族に割り当てれば、ひとり150万円程度になる。「自分の生活にかかる最小限のコスト」を計算すれば、常に余裕があり、楽しく生きていけるとイケダ氏は語る。
「鶏の胸肉をいかにして美味しい料理にするか」「交通費の節約も兼ねて、街を歩く」など、毎日をゲームのように楽しみながらお金を節約し、必要最小限の努力で、自分の職能スキルを磨き、短い労働時間で目標年収を稼ぐことを目指している。
年収150万で自由に生きていく方法とは、「人ひとりが、あらゆるムダをカットして、必要なものにお金をかける生き方」のことをいう。
イケダ氏のブログの発言は一見すると、極めて反社会的にみえるものばかりだ。「鈍感な善意は最高の害悪だ」、「『ブス』の定義について考えてみた」など、タブーに触れるような発言は、しばしばネット上で話題になり、「炎上」することも多い。
イケダ氏より上の世代からは、苦言を呈されることがある一方で、この独特な生き方が注目を浴びているため、「ネット世代のオピニオンリーダー」として、テレビやネットメディアで登場する。
イケダ氏は本書で「『お金のために働く』のは時代遅れになっていく」ことを主張する。家や車を買うなど、「お金のために働く」のではなく、知識を得る、つながりを手に入れるなどの「精神的な欲求」を満たすために生きることがこれからの時代に必要であると本書で述べている。(オルタナS特派員=高橋一彰)
・『年収150万円で僕らは自由に生きていく』(星海社新書)