タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう

なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)

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◆クロコダイルエイド

Just waitとダンは言ってスーツケースからクロコダイルの派手なビンを取りだして大男に持たせて、自分は二種類のカメラを取り出した。一つはアメリカのスポーツ産業を撮ってあるキャノンの一眼レフで、もう一つはコダックのインスタマチックカメラだった。大男は慣れた素振りでビンを右手で自分の顔の横に持って、左手でダンを引き寄せた。

ダンは近くにいたセカンドの千田とショートの田中を呼んで写真を撮ってくれと頼むと大男は愛想の良い笑顔を作ってくれた。「グッドラック ミスタービジネスマン」そう言ってユニフォームの後ろのポケットにバットを突っ込んでグランドに出て行った。

コーチの近藤さんが来て、ベンチでゲームを見て行くかと聞いたが、ダンは礼を述べただけでネット裏の記者たちの方に向かった。
「高倉さん」ダンは見慣れたスポーツライターの高倉に駆け寄った。
「ダン、アメリカ行ってたんだって」
「そうなんです。面白い物持ってきました。クロコダイルエイドって言います。これからは練習中でも試合中でもガブガブ飲んでもいいんですよ」
「飲んでも運動能力に支障はないの?」
「スタンレーだって飲んでくれるんですよ」と言ってダンはさっき撮ったポラロイド写真を見せた。とてもよく出来た宣伝ポスターの様だった」
「なんだ、この飲料水は?」
「アメリカではNBAでもNFLだってタンクに入れてベンチに置いてあるんですよ。血液と同じ成分が含まれていて、むしろ運動能力を高めるんですよ。クロコダイルエイドって言います」
「ダンはこれどうするの?」
「日本で売るんです。これからは熱中症で倒れる選手はいなくなるんですよ」

次の日のスポーツ日報の二面の下の方に、スポーツ界の革命になるか?クロコダイルエイドという記事とボトルの写真が載っていた。ダンがアメリカで撮ってきたフィルムを全て高倉に渡したからそのお礼の記事だった。昼頃、その記事を見てからぐっすりと夜まで眠ったダンの家に高倉から電話がかかってきた。

「ダン、新聞社にもどこで買えばいいんだって電話が何本かあったよ。今度本格的な取材するから、一般の人が買えるようにしといてよ」
ダンは嬉しかった、嬉しかったけど困った。販売する会社もないし、第一クロコダイルエイド社だって正式にその販売権をくれたわけではなかったからだ。

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