タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう

なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)

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◆食糧とエネルギー

「例えば裏の畑でキュウリを作るって思ってみなー」
末広が言うのを聞いて「敏夫だったら、作ってみろし」と言うんだなと啓介は思ったが、余計なことだと思い直した。人が喋っているのにいつも違うことを考える。
「わずかな量じゃ、農協にも持って行けず、近所に配ることになるよな。隣村に嫁いだ娘の所にも持っていくだろ、すると娘は『爺ちゃん一家三人でキュウリ100本なんか食べられんずら』と来るわけだ。仕方なしに爺ちゃんは10本だけ置いて、悲しそうに90本を持って軽トラで帰るんだが、途中で猿の親子に出会うと、キュウリ全部を投げてやるっていう図式よ。これでも自給率は40%を切るって言うのか?」

「じゃなんで日本は食料を輸入しているのですか?」桐嶋が聞いた。
「桐嶋さんは知っているくせに」と啓介は心の中でつぶやいた。
「すごいキャッチャーだよ。ピッチャーの持ち球を知っているくせに『ツーシームは投げられないよね?』とか聞いて、なにを言うかとばかりツーシームをピッチャーが投げると、パ―ンといい音をさせて捕球しておいて、『ナイスボール!シーズンに入ったらそれ決め球にしよう』

エスキモーは目をむいて言った。「あんたがたがワインなんか飲むからじゃねーか。つまみはなんでー、高級チーズか?キャビアか?日本はカロリーではなく輸入金額で計算して『ずいぶん輸入してますね~』とかいう国なんだよ。他の国はカロリーで計算だ。カロリーが一番高い食物はなんだ?米だろ?その米が余ってるの、減反しろのと言ってるやつが、自給率の危機かい?」

「そりゃそうですね」キャッチャ―が驚いたように言った。勢いに乗ったピッチャーは振りかぶって言った。直球をズバリと投げようとしている。「日本は世界で5番目か6番目かの農業大国だ!」
「どっちですか?」桐嶋が聞いた。

「あれ、7番目だったかな?とにかく農産品は売るほどあるんだけどよ。いくら作物があっても、石油がなければ運べねーよな」
啓介はまた他の事を考えてしまった。70歳を越えた吉田相談役と昼食を共にしたとき聞いた話だ。40年以上前日本を襲ったエネルギー危機、オイルショックの話を聞いたときのことだ。

当時は石油がないから物不足になると言って、国民全部がトイレットペーパの買い占めに走ったという話である。「新聞もテレビも石油不足の危機をあおっていたけど、私はそんな報道は嘘だと思っていたよ。当時私は海上保険の契約に注目していたんだ。だから当時一緒になった家内にトイレットペーパーなんか争って買うんじゃないといったのだが、女房は聞き入れなかった。タンカーの積み荷に掛ける保険の依頼は普段通りコンスタントに来ていたから、少なくともアラビアからのタンカーはコンスタントに航行していたとわかっていたんだよ」

文・吉田愛一郎:私は69歳の現役の学生です。この小説は私が人生をやり直すとすればこうしただろうと言う生き方を書いたものです。半世紀若い読者の皆様がこんな生き方に興味を持たれるのであれば、オルタナSの編集スタッフにご連絡ください 皆様のご相談相手になれれば幸せです。

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