タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう
なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)
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◆原発爆発
何所をどう走ったかよく覚えていない。ただ真っ直ぐ空に向かって建っている原発の建屋から狼煙の様な白い煙が吹き上がった瞬間だけフラッシュバックして来る。
原発の爆発だ。「エクスプロージョン」リズは短く叫んだ。昨日の津波が嘘のような、真っ青の海の上に広がる真っ青な空に、白い破片が舞い上がっている。「リズ」「リズ」誰かが呼んでいる。その声に向かって「ヘールプ」とリズは叫んだ。
「Are you OK?」隣に座っている啓介の顔が横から覗き込むように迫っていた。夢だった。どこまでが現実で、どこからが夢だったのか。あるいは全て夢だったのかリズは分からなくなった。そしてなんで自分がここにいるのかも分からなくなってしまった。
原発の爆発が現実だったならば、それからどうしてここまでやってきたのかが思い出せないのだ。末広と店のオーナーが心配そうにリズを覗きこんでいる“You are tired”末広が言った。“Yes, I think so.”
「啓介、リズを家に送ってくれ」末広が言った。
「一人ダイジョブ」リズが言うと啓介に今座っている木製のチェアの上にあるクッションを使っていいかと尋ねた。それから、あたりをぐるりと見渡して、テラスのフェンスの脇に死んだ青大将のように不規則に捨てられていた2メートルほどのロープを見つけるとそれも欲しいと言った。啓介はレストランのオーナーにそれを言うと、既に意味を理解していたオーナーが、ロープを取りにウッドデッキに向かっていた。
足音が怪訝さを表していた。“why?” 末広が尋ねると“ホース”とリズが言った。
“May I ride Back?”“ シュアー”と末広が言って、呆れたように首を振った。
「どうしたんです」啓介が末広に尋ねると「大変なおばちゃんだよ」と末広が嬉しそうに微笑んだ。
「二頭は大変だからお前が一頭は引いて帰れ。俺はオーナーと少し喋っているから、馬を馬房に入れてからリズを寝かせて、お前は車を正面に持ってきてくれ」啓介は何だかわからなかった。しかしリズが大きくアクビしてからクッションとロープを持ってけだるそうに立ち上がるのを見て、啓介はその後に従うことにした。リズは何も言わず階段を降りてレストランの裏から出た。少し離れたところで、馬達が平和そうに葉を食べていた。
文・吉田愛一郎:私は69歳の現役の学生です。この小説は私が人生をやり直すとすればこうしただろうと言う生き方を書いたものです。半世紀若い読者の皆様がこんな生き方に興味を持たれるのであれば、オルタナSの編集スタッフにご連絡ください 皆様のご相談相手になれれば幸せです。
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