タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう

なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)

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◆結団式

「食糧自給率、つまり日本人は100%日本で作られた農作物を食べて生きていけるかと質問されれば、イエスと俺は答える」と末広が言った。鼻の穴が大きく膨らんだ。「だけど儲からないから百姓はつくらねえんだ。畑仕事止めてコンビニで働いた方が実入りがいいもんな」

そこで末広は大きく息を吸った。「だけどよお、食い物っていう生存エネルギーは余ってるんだが、生活エネルギーは殆ど輸入よ」
「生活エネルギーって何ですか?」敏夫が尋ねた。「電気やガスや動力?」啓介が末広が答える前に言った。
「そうよ、石炭、石油やガスは100%輸入。電気もそういった燃料を燃やして作るんだから、90%位は輸入なんだ。この大地震と津波で原発も全部ストップになるから、エネルギーの自給率はさらに下がって4%位になるんじゃねえの」末広が後に続いた。

「ええ?食料は余って、エネルギーは4%しかないんですか?輸入が止まったら、真っ暗闇で、米も焚けんじゃないですか、それより都会の人には米も届けられんってこんだ。都会は腹をすかして、田舎じゃ食い物が腐るずら」
「だから俺たちは農地でソーラー発電をするんじゃないのかい」
「そういうこんですが、うちの畑は青地だから、ソーラーパネルは建てられんですよ」
「だから敏ちゃんに農業を復活してほしいんだよ」末広が言った。
この大男はいつの間にか親しくもない人をファーストネームで呼んでしまうんだなと啓介は思った。アメリカみたいだ。
「ええ?オレですか?農業は儲からんと言ったでしょう」
「言ったさ、でも損を覚悟でやってほしいんだよ。お国のためだ」
「でもオレ、損する金ないですよ」
「パチンコして損する金はあるじゃねえかい?」
「仮想の博打より、人生の博打うたないか?しかも損がない博打よ」
「なんで損がないんですか?」
「汗流すのが損なら、山登りも女抱くのもやめろ」
「あれは楽しいです」
「これはもっともっと楽しい」
「オレ無職になるからやりたいです」と啓介が言った。
「お前さんはもう数に入っている」
「あっそう」
「啓ちゃんがやるならオレもやろうかな」
「それなら今から始める」
「今からですか?」
「ではいつからにするんだ?それまで何するんだ?」
「そういわれれば今からですね」
「今からってこんだ」
春の光が柔らかく皆をつつみ、梢からイカルが三人を見下ろしていた。

文・吉田愛一郎:私は69歳の現役の学生です。この小説は私が人生をやり直すとすればこうしただろうと言う生き方を書いたものです。半世紀若い読者の皆様がこんな生き方に興味を持たれるのであれば、オルタナSの編集スタッフにご連絡ください 皆様のご相談相手になれれば幸せです。

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