このプログラムに参加して、自分自身の中で得たことや気付いたこと、変化したことなどいくつかある。その中でも今回のプログラムに参加して自身の中で大きな変化を起こし、今後の人生への最も大きな糧となると思われるのが「実際の現場に足を運ぶことの重要性を知れたこと」である。
その現場に行くことの重要性に気付いた一つのファクターとしてプログラム初日の現場視察で見た「陸前高田の一本松」が挙げられる。このプログラム参加以前に私が「一本松の保存事業」に関して思っていた事は、「何故多額の費用を投じてまで保存作業をする必要があるのか、限りある資金を投じるべき対象が他にあるのではないか」ということである。
それは新聞やテレビなどメディアを通じて得た情報を基に考えていた結果であるが、ただ実際に地震により引き起こされた津波による被害の凄惨さ、被災から2年半経った時点での復興の進行状況を肉眼で見たことによって違う考えも想起された。
それは「これから先どのくらいの年月が要するか分からない復興活動に際して、一本松のような感情的に震災に屈せず、必ず復興を達成させるという気持ちを奮い立たせられるシンボル、象徴をつくり出すことも必要なのでは」といった考えである。
このような考えは、都内に住んでいたままでは思いつくことができなかったし、また他者からこのような考え方を聞かされても理解できなかったに違いない。しかし実際に現場の状況を見たことによって、例えば一本松に関して別の考え方を得ることができたように、自分自身の中で価値観の変動が起きた。
プログラムに参加したことで、そのような内省的体験を経験し、「実際の現場に足を運ぶことの重要性」を感じたのである。ただ今現在でも決して一本松の保存事業に関して「多額の費用を掛けてでも絶対に一本松を後世に残さなければならない」と決めつけているわけではなく、保存事業に関して新たな視点を1つ得たという感覚である。
物事、事象に関して新たな視点を持つための手段として実際に現場を訪れてみるという考えを持てるようになったこと、これが自分自身の中での大きな成果、成長であると思う。(森倉吾朗)