タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう

なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)

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◆スポーツビジネス

アメリカのスポーツ界は新鮮だったが、アメリカのスポーツビジネス界はもっと新鮮だった。
ダンは色々なスポーツチームに顔を出すよりスポーツ産業を訪問する方が多くなった。
スポーツドリンク会社を筆頭に色々な会社に出向いた。スポーツ選手はアフリカ系が多かったが、スポーツビジネスはユダヤ系が活躍していた。ユダヤ人は製造業をしない。長らく国がなかったせいもあるが、イスラエルが出来た後も他国でのビジネスはいつでも追放のリスクが付きまとうからだ。そして何よりも彼の心を捕えたのがマーケティングだった。これを日本でやろう。

羽田空港に向かうパンアメリカンに載せたスーツケースの一つには、クロコダイルエイドドリンクのいわばジュースの元の粉末(プレミックス)と最新デザインのスポーツシューズ。それにテーピングの色々なテープが詰め込まれていた。
ダンは羽田から大阪の伊丹空港に乗り継いで、そのまま自分をクビにした球団のスタジアムに向かった。試合の2時間前だった。ダンはすぐロッカールームを訪ねた。旧チームメイト皆が大歓迎した。メジャーリーグの大男も何者かと日本人たちの輪を見つめていた。ダンは挨拶を一通り済ますと黒人の大男に近づいて、ハロー、ハワユウー アイム ダン と言った。大男はハイとだけ言ってほほ笑んだ。

「今LAから戻りました。昨シーズンまでこの球団でプレイしていました。私はアメリカ国籍です」と言った。それを聞くと大男は自分がこの若者に良くない事をしてしまったという顔になった。外人枠が3人で、今シーズンは後2人のアメリカ人がもうすぐ合流することになっていることを知っているからだ。だから追い出されたダンがアメリカのスプリングキャンプに参加することになったことがすぐ推測出来た。しかし彼はここにいる。だからアメリカでの夢は破れたのだと直感した。

「ソーリー」と大男は言った。
「ノー、ノープロブレム」ダンは言った。
「アメリカで色々なスポーツを勉強しました。スポーツ産業の事も勉強しました。そして色々なスポーツシューズやアスレチックテープなど、アメリカの色々なスポーティンググッズを日本で売る事にしました。特にクロコダイルドリンクは売れると思います」と言ってスーツケースからその粉末を出して見せた。
「オー、クロコドリンク。ボクこれがないとプレイできないよ」大男が言った。
「では毎試合持ってきます」
「THANK YOU VERY MUCH」
「記念写真撮らせてください」
「COME ON!」

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