オルタナS編集部はこのたび、社会の広告社と共同で大学生向けにソーシャルイシューの現場を体感する「ソーシャルステイ」を行いました。今回のステイ先は、介護や保育や障がい者支援を展開している社会福祉の現場。公募で集まった大学生たちは、社会福祉の領域で活躍する若手リーダーのもとを訪れ、密着取材を実施しました。その模様をお伝えします。

「社会福祉HERO’S TOKYO 2019」プレゼンテーターに学生ライターが会いに行った!連載④豊悠福祉会 中嶋ゆいさん『社会福祉×ファッションで町おこし、介護ってこんなに面白い』

社会福祉の現場でさまざまな挑戦をしている若手スタッフたちが登壇するイベント「社会福祉HERO’S TOKYO 2019」(12/10開催)に登壇する7人のプレゼンテーターに学生ライターが密着取材。その第四弾は、武蔵大学の糸井明日香さんが、社会福祉法人豊悠福祉会(大阪)で働く中嶋ゆいさんに会ってきました。

12月10日に開かれる「社会福祉HERO’S TOKYO 2019」には社会福祉を担う若手7人が登壇、中嶋さんもその一人

ファッションショーの企画に込めた想いを語る中嶋さん(左)を取材する糸井さん

社会福祉とファッション、この二つの言葉を聞いて、何を思い浮かべますか?この二つの言葉は、普通なら結びつかないものかもしれません。しかし、老人ホームの入居者をモデルにしたファッションショーを開催した社会福祉法人があります。社会福祉の現場は私たちが想像するよりずっとクリエイティブ。大阪の小さな町で挑戦を続けるヒーローに話を聞きました。(糸井 明日香)

利用者をモデルにファッションショーを開催

大阪にある人口2万人弱の町、豊能町。この町で活動する社会福祉法人豊悠福祉会は、支援を必要とする高齢者や障がい者が通ったり、集まったり、暮らしたりできる場をつくることに注力してきました。

利用者の方と会話する中嶋さん(右)

今年6月には、この町で最大規模のホールを会場にしたファッションショーを開催。祥雲館の利用者や地域住民がモデルとなって、思い思いのファッションを舞台上で披露しました。利用者の家族や地域住民、学生など330人を動員し、当日は大盛況。地域が一体となるイベントとなりました。

町で最大規模のホール「ユーベルホール」でファッションショーを開催

「普段、特別養護老人ホームのような福祉施設には、利用者の家族や関係者しか立ち寄ってもらえず、暗いイメージを持たれてしまいます。でもそれが『ファッションショーをやるから是非来てもらえませんか?』って言うと、たくさんの人が興味を持ってくれるんです。こういうきっかけから、学生さんにも社会福祉という分野に興味を持ってもらって、視野に入れてもらえたらいいなと思います」―――そう話すのは、豊悠福祉会ユニットサブリーダーの中嶋ゆいさん(26)。

豊悠福祉会が運営する特別養護老人ホーム「祥雲館」のスタッフは総勢200人以上。中嶋さんはここで働く一人です。介護だけではなく、近年は地域住民の交流の場づくりにも力を入れており、その一環としてファッションショーを開催しました。

開催した、とひとくちに言っても、簡単なことではありません。まずは、モデル一人ずつにヒアリングを行って採寸し、衣装のイメージをふくらませます。そして、協力者のデザイナーに衣装を提案していただき、小物なども作ってもらったりとイメージに合った衣装ができあがります。当日まで、特にモデル利用者の体調に配慮しながら、ファッションショーの進行を考えます。協力してくれるスタッフや地域住民との打ち合わせも多く、さらには、当日のボランティア学生の配置や活動内容も決めなくてはいけません。「やることは尽きなかった」と明かします。もちろん、この間に日々の業務がなくなるわけでもありません。

へとへとになっても「やって良かった」と思えるのは、モデルの方も、その家族も、他のスタッフも心から喜んでくれるから。昨年から始まったファッションショーは今年で3回目の開催となりました。

最後まで願いを叶える介護のかたち

ファッションショーは、利用者さんの「願いを叶えたい」という思いと、学生に「社会福祉のおもしろさを知ってもらいたい」という二つの思いから誕生しました。

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