タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう
なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)
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◆戦い終わって
末広は体を丸めたままで、小室の上の男の首に腕を回し、裸締めをしながら男を引き剥がした。すると一番先に蹴られた男が鼻血を流しながら、末広の首の付け根をビール瓶で上から殴った。頭を狙ったのが外れたのだ。
すると小室が米つきバッタのように後ろの床に跳ねて立ち上がり、その男の耳の辺りに再び回し蹴りを叩きつけた。叩きつけられた男が床に崩れると、小室に投げられた背の高い若者がベッドから降りるようにテーブルから床に降り、隣のテーブルのビール瓶を掴んでビンの尻を割った。
すかさず小室が横から手刀でその男の手首を叩きビンを落とした。しかし、すぐ黄色い髭の男の大振りのフックが小室の頬骨に炸裂し、小室は尻から崩れたので末広は小室を跨ぐように前に出ると男の襟首を掴んで、払い腰で投げた。
髭の男がもんどりうちながら背中で並んだ椅子を薙ぎ倒す音に、ポリスとかアスカリという叫び声が混じった。警察が来たようだった。末広は気付けのため、小室の顔にビールを含んで吹きかけ、首を振って目を開けた小室の手を引いて原っぱを走った。
二人の女が一緒に駈けだして先回りをして裏戸を開けた。近くに停まっていたタクシーに4人で乗り込み、ナイロビのスラム街を30分ほど巡って、ほとぼりがさめたころ、ウエスランドのホテルに戻った。警察の車が追って来ていないことを確かめて、それぞれ女を連れて部屋に入った。
しばらく女と楽しんでいると、誰かがドアをノックした。末広は驚いた。ついに警察に見つかったか。外から小さい声がした「ワシやワシや」。小室だった。ほっとした末広がドアを開けると「ちょっと来てくれへんか」
「どうしましたか」
「なんやか女の紐のような奴が来て、金を払えと言うとるんや。金でけりをつけるか叩きだすんかの」
「俺も良く言葉がわからないけど」と言って末広が廊下に出ると4人をここまで連れてきたタクシードライバーが困った顔をして立っていた。
「小室さん、さっきの運転手ですけど…」と言うと小室は「なんや」と言って安堵の表情を浮かべた。
「ワットドウユワント?」と末広が言うとドライバーが言う事には、ずいぶん待っているんだがいつまで待つんだ?もう遅いから帰りたい。金を払ってくれと言っているようだった。
「ハウマッチ」「60シリング」
末広は100シリング札を渡しながら、自分解いた女にこれに乗って帰れと言った。疲れがどっと出て一人で眠りたかった。
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