熊本県にある崇城大学は地方創生のため2014年に大学公認の起業部をつくった。部員は21人おり、8チームに分かれてビジネスプランを練っている。ビジネスサークルは全国の大学にあるが、大学公認の起業家育成の部活は珍しい。その取り組みを追った。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
■女子大生が地元焼酎をブランディング
起業部の部長を務める白石美嘉さん(崇城大学生物生命学部応用生命科学科3年)は、古賀碧さん(同大学生物生命学部3年)と「UNIT」という団体を立ち上げ、地元熊本の球磨(くま)焼酎を使ったフルーツデザート酒の企画・販売を行っている。
フルーツデザートの名称は、「ごくりくま」。由来は、「ごくりと飲み干す、球磨の味」から取った。もともと2人とも焼酎は飲めず、事前アンケートの結果も、焼酎を苦手とする若者は多かった。そのため、フルーツリキュールを使って、焼酎らしさを残しながら、甘く仕上げた。
2人はごくりくまの開発資金50万円をクラウドファンディング「MAKUAKE(マクアケ)」で募った。現時点では20~30代の男女182人が支援し、集まった金額は目標の50万円を大幅に超える112万5000円に及ぶ。残り50日で150万円を目指す。
ごくりくまは県内の居酒屋やホテル、旅館に卸す予定だ。マクアケを運営するサイバーエージェント・クラウドファンディング(東京・渋谷)の協力を得て、東急ハンズ熊本店でも販売することが決まっている。売上の結果次第で、全国にも販路を広げていく。
球磨焼酎に目を付けたのは、古賀さんがきっかけ。古賀さんの地元は人吉球磨地方で、幼い頃からお酒をつくることの苦労さを身近に見て育ってきた。古賀さんは上京したときに入った居酒屋でお酒を注文したさい、そのメニューに「球磨焼酎」の文字が一切ないことにショックを受けた。「おじいちゃんはあんなに頑張って作っているのに。もっと、たくさんの人に知ってほしいと思った」(古賀さん)。
2人は若者に合う焼酎を開発するため、地元にある約30の酒蔵を訪ねた。フルーツリキュールを使った甘い球磨焼酎を販売している4つの酒蔵に話をして、セットで販売できるようにした。パッケージを新しくして、商品名も考えた。こうして、「ごくりくま」が生まれた。
白石さんと古賀さんのペアで挑む企画は、このごくりくまが第一弾。白石さんは、「地場資源を使って、現代に合う形の商品を開発していきたい」と熊本の活性化へ意気込む。
起業部はアントレプレナーシップの育成を目指して、崇城大学の学長自らが立ち上げにかかわった部活である。毎週月曜日に定例MTGがあり、各チームが進捗状況を報告する。不定期で外部からビジネスパーソンを講師として呼び、講演会を開いている。入部するためのテストなどはなく、希望者は誰でも入ることが可能だ。
同大学内に起業部のラボを持ち、登記する際にラボを拠点にすることができる。資金的な支援はまだ行っていないが、起業部の担当教員である中島厚秀・崇城大学総合教育センター准教授は「大学として出資する準備はすでにできている」と言うことから、時間の問題だ。
同部活ができてまだ2年のため、この部活から起業した学生はいないが、個人事業主として数人が起業に向けて準備中だ。
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