千葉の南東部に位置する、人口約3万3千人の鴨川市。そこで天津神明宮の禰宜(ねぎ)である岡野大和さんにインタビューした。鴨川市は、鴨川シーワールドを中心に観光地や市街地が集中しているが、さまざまな問題も抱えていた。その一つが「補助金への依存」。岡野さんは脱補助金依存へ奔走する。(武蔵大学松本ゼミ支局=寺山 涼花・武蔵大学社会学部メディア社会学科1年)

取材した岡野さん

天都神明宮は鎌倉時代から継がれていて、現在、岡野大和さんは禰宜(ねぎ)という役職に就いている。禰宜とは神主の下の役のことだ。

禰宜でありながら、複数の肩書を持ちながら事を行う。岡野さんは千葉大学を卒業後、IT企業を立ち上げ、鴨川の地域振興活動などにも精を出す。

鴨川市振興の主な活動内容は、「かもナビ」と「Kamo Zine」である。岡野さんは、「鴨川にIT企業を取り入れ、房総にもシリコンバレーをつくる」という夢を掲げてこの活動に取り組んだ。

かもナビとは2008年10月に正式オープンした、鴨川市のホームページである。かもナビ誕生のきっかけとなったのは鴨川市の合併にある。2005年2月11日、旧鴨川市と天津小湊町が合併して、現在の鴨川市が誕生した。

これを機に、鴨川商工会内で、鴨川市のホームページをつくろうという意見が出て、岡野さんに声がかかった。

岡野さんはボランティアとして、かもナビ実行委員会の中心となって活動した。しかしこの活動をはじめたことで鴨川の課題に気付いた。それは、鴨川市民の「補助金依存体質」について。

「鴨川の人たちは補助金に頼ってばかりで、がっかりした。補助金を一切使わないで自力でやろうと考えた」と話す。

自らIT企業を立ち上げた経験から、鴨川市民に「自分たちで知識をつけ、賛成させることができる」と伝えたかった。そのため、それぞれの団体でホームページの一面を作成するように指示した。その結果、人々はやっと鴨川の課題(補助金依存体質)を見つけることができたという。

Kamo Zineとは、2009年6月に創刊したフリーペーパーである。1年に3万部を3回配布している。かもナビだけでは限界があると考え、Kamo Zineを作成するに至った。岡野さんは「ネットだけでなく紙の方が、お年寄りに喜ばれる」と話す。

Kamo Zineには岡野さんの強いこだわりがある。それは、広告枠を入れないということ。岡野さんは「ほとんどのフリーペーパーは、広告枠のお金で賄っている。だが広告がある紙面などつまらない。意地でも広告枠を作らないと決めていた」と力を込める。

配布先の一つは学校だ。鴨川市の小・中・高校生全員に、学校を通して配布している。学校で配布することで、生徒の親まで目を通すため効果がとても良いそうである。

このように、かもナビ、そしてKamo Zineと複数のメディアを使うことで宣伝力がドンと上がった。そして現在、だんだんと鴨川市民が一つにまとまってきているという。

その他にもチャリティーでプロレスの試合を開くなど、様々な領域に活動を広げている。しかし、まだそれぞれ好きな方向へ向かっていて一緒になれていないのが現状だ。岡野さんは「鴨川に対する明確なビジョンを全体で決め、みんなで一つの目標を立てて取り組むのが理想」と話す。


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