タイトル:電園復耕~大通りからそれて楽しく我が道を歩こう

なぜ人を押しのけて狭き門に殺到するのか?自分を愛し迎えてくれる人たちとの人生になぜ背いて生きるのか?
この書き下ろしは、リクルートスーツの諸君に自分の人生を自分で歩み出してもらうために書いた若者のためのお伽話である。(作・吉田愛一郎)

◆前回はこちら

◆ナイロビの朝

「おはよう。どうしたの?」エンジニアの一人が顔をくもらせて尋ねた。
二人のブレックファーストのテーブルに末広が近づきながら問い返した。
「お早うございます。何がですか?」
「目の痣だよ」もう一人が上目遣いで聞いた。
「痣って?」
「片目がパンダみたいだよ」
そういえば左目の周りが痛いとは感じていた。
まさかそんな酷くなっているとは思いもよらなかった。
「ちょっともめごとがありまして」と言って頭を掻いた。
白いユニフォームを着たウェイターがやってきた。末広の顔を見ると少し表情を変えて卵をどうするか尋ねた。「フライドエッグ」と答えてから、酷いですか?と向き直って二人に尋ねた。
「ああ、所長に直接言い訳はしなければならないだろうね。僕たちは今日の昼からエチオピアの国境近くに行くことになっているから」
「どのくらいそこにいるんですか?」
末広は話題が喧嘩の事に及ばなくなったので助かったと思った。
「半年は居ることになると思う。イタリアのNGOと共同で道路を作るんだ。イタリアの施設でイタリア人のコックがいるそうだ。資金は日本が出すらしいけど。昼近くにイタリア人が車で迎えに来るそうだ」
ウェイターがトーストと黄色いジュース、それにソーセージが付いたフライドエッグを持って来てそれらをテーブルに並べながらコーヒーかティーかと尋ねた。末広がコーヒーと言うと、ブラックかホワイトかと聞いてきた。

末広は訳が分からずホワイトというとウェイターは銀色の金属のポットを二つ持って来てその一つから暖かいミルクをカップ三分の一ほど注いでからもう一つのポットからコーヒーを注いだ。エンジニアたちは朝食をすませると出発の支度があるからと言って会場に上がって行った。

食堂は開け放たれてテラスにつながっていた。空気は爽やかでそよ風が花の香りを運んできた。外は駐車場でまばらに置かれている古びた車を昼前の陽の光が反射していた。車が一台駐車場に入って来た。白いターバンを陽光に照らして、インド人らしい男が車から降りてきた。

昨日、トロピカーナというレストランで会った男だった。末広を見ると煙草のヤニで汚れた歯を見せて笑い末広のテーブルの椅子に腰を掛けてから、いぶかしそうに末広の顔を覗き込んだ。そして痣の理由も聞かずにケニアシリングの札束を見せてもっと替えてやるぞという素振りをした。

この続きはこちら


【編集部おすすめの最新ニュースやイベント情報などをLINEでお届け!】
友だち追加

[showwhatsnew]

お知らせ オルタナSでは、社会問題の解決につながる活動を行う若者を応援しています。自薦・他薦は問いませんので、おすすめの若者がいましたらご連絡お待ちしております。記事化(オルタナS/ヤフーニュースほか)に加えて、ご相談の上、可能な範囲で活動の支援をさせていただきます。お問い合わせはこちらから