チームの選手全員が兼業農家というハンドボールチームがある。福岡県糸島市を拠点に活動する「フレッサ福岡」だ。スポンサー・ファン離れによる資金難で実業団チームが年々減っていくなか、地域に密着しながら競技を続けられる新しいモデルケースとして期待されている。(武蔵大学松本ゼミ支局=木村 柚・社会学部メディア社会学科3年)
■「そんな夢のない話あってたまるか」
実業団中心のJHL(日本ハンドボールリーグ)は企業の経営悪化により休廃部が続いた。男子部門は最大18チームあったが、現在は半分の9チームとなってしまった。
大学生のハンドボール競技人口は数万人に及ぶ。JHLの9チームが毎年2人ずつ新しい選手を獲得したとしても、全部で18人。学生プレイヤーからトッププレイヤーになるのは狭き門だ。
「そんな夢のない話はあるか。それなら10チーム目に名乗りを上げてみようと思った」、フレッサ福岡の代表前川健太さんは言葉を強めた。
チームをつくる際、一番ネックになるのは資金面。どうすればクリアできるか悩んだとき、「絶対になくならない産業って何だろう」そう前川さんは考え、農業を思いついた。
■人材不足の農家は「歓迎」
選手たちは夜に練習を行い、日中に賛同農家のもとで農作業を手伝う。収穫物を売り、その収入の一部が選手に渡る仕組みだ。人手の足りない農家側にとっても選手の労働力は大きな助けとなっており、農家側も歓迎しているという。
「兼業農家のハンドボールチーム」というおもしろさから、ハンドボールファンだけではなく地域住民に応援されるチームとなりつつある。メディアからの取材依頼も増えてきた。フレッサが運営するファンクラブには現在600人ほどが登録している。
「何よりもまずはハンドボールがメジャーにならなければいけない。選手たちがいつか独立して食べていけるためにも、そのあとに続く若い世代の人たちが食べていけるようになるためにも、しっかりと土壌を作っていく必要がある」と前川さんは話す。
フレッサ福岡は今年、JHLの下部リーグにあたる「チャレンジ・ディビジョン」に参入。発足からの目標であるJHL参入を目指す。