事業を通じて、社会課題を解決したい――。リジョブ(東京・池袋)は、2009年に創業以来、美容やヘルスケア、介護業界で人材不足の解消と同時に、働き方改革を提案してきました。目指すのは、一人ひとりの自己実現を叶えること。「自らのビジョンと会社のビジョンが重なっていたから、入社を決めた」と話す、新卒5年目の中核メンバーに話を聞きました。(山本 めぐみ=JAMMIN)
■「一人ひとりの豊かさ」を実現するプラットフォームへ
リジョブの主力事業は美容やヘルスケア、介護の分野に特化した求人サイトの運営。社会で生きる一人ひとりが働き方を通じて自己実現できる場を提供しています。
「人と人との『結び目』をたくさん作り、広げて、それぞれの人にとって心豊かな社会をつくることが私たちのビジョン」と話すのは、入社5年目の吉田奈津美(よしだ・なつみ)さん。リジョブの中核的なメンバーとして活躍しています。
吉田さんは、「リジョブは美容・ヘルスケア・介護といった“おもてなし業界”において、限られた一部の人だけではなく、より多くの方の多様性のある働き方と生産性向上を実現しようと、それぞれの業界の実態に向き合っています。そして、“働きやすい”とは言いづらいこの業界の課題解決に挑むことで、一人ひとりの豊かさを実現しながら、社会課題の解決を目指しています」と言います。
特徴は、「一人ひとりの豊かさを実現しながら」という点です。例えば、介護業界では労働力不足という課題があります。そこで、解決策として、業務を細かく細分化することによって、介護の専門職ではなくても、そのうちの一部分だけなら担えるという人の介護業界への門戸を開きました。
働き方の多様化を提案し、介護業界と働きたい人をマッチングし、活躍したい人を応援するプラットフォームを運営しています。
■入社の経緯は「社会にインパクト与えたい」
入社して5年、これまでにWEBマーケティングや社長室に籍を置き、さまざまなプロジェクトに携わってきた吉田さん。彼女はなぜ、リジョブで働くのでしょうか。
「私自身のビジョンを実現するために、入社しました」と言います。どんなビジョンを持っていたのでしょう。
「私には『国と国がよりつながり合いwin-winの方向に成長していくことで、人々がより幸せになる世界を築きたい』というビジョンがあり、外交官になりたいと思っていました。その志をかなえるために京都大学法学部に進み、大学4年の時に外交官試験を受けました。しかし筆記試験は受かったのですが、面接試験で不合格。当時はものすごくショックを受けました」
「翌年、もう一度外交官採用試験に挑戦することも考えましたが、もっと幅広い視野でいろいろ見ても良いのかもしれないと、企業から非営利団体まで、就職先としていろんな可能性を考えるようになりました」
その当時はスマホが普及し出した頃。また、個人宅を貸し出す「Airbnb」などのブームもあり、世界がよりボーダレスにつながり始めた頃でした。新たなサービスの普及とともに法律の改定なども行われ、社会の変化を肌で感じ取っていた吉田さんは、「これから、もっと時代は変わるだろう」、そう思ったといいます。
変化の激しい時代に必要なこととして、「影響力」と考えます。影響力があれば、よりたくさんの人を巻き込み、社会に大きなインパクトを与え、変えていくことができる、そう強く考えるようになったのです。
「そう考えた時、ビジネスの持つ可能性に惹かれました。大企業からスタートアップまで、規模も業種も様々な企業の話を聞いていく中で、大企業とベンチャーそれぞれの役割について考えました。その過程で既存にはない新たな道を自ら作り出せるベンチャー企業に魅力を感じるように。最終的には新たな価値、影響力(インパクト)を生み出したいと、ベンチャー企業への就職を考えるようになりました。そして『ここなら自分のビジョンを叶えられる』。そう感じ、リジョブに入社しました」
■人それぞれの「幸せ」を叶えたい
「つながり合うことで、人々がより幸せになる世界を築きたい」という吉田さんのビジョンは、いつ、どんなことがきっかけで生まれたものなのでしょうか。
「中学三年の春休みに、内戦中のスリランカにホームステイしたことがきっかけです。初めての途上国でしたし、治安も経済状況も悪く、物乞いする人を初めて見ました。最初はただただ怖くて早く帰りたいと思っていましたが、時間が経つに連れて、どんどんスリランカを好きになっていく自分がいました。『なぜ、こんなに好きだと思うんだろう?』と考えた時に、それは日本には無いものがスリランカにあるからだと思ったんです」
「日本と比較すると、経済的には貧しい国です。だけど今日の仕事もないような状況の中で、それでもみんなキラキラと笑顔だし、損得感情抜きでみんながすごく親切なんです。一方で日本は、経済的に豊かな国ではあるけれど、どこか生きづらさがあって、鬱になる人や自殺する人がいる。『豊かさ』というのは必ずしもお金だけではない、価値観や基準は一つだけではないんだと気付かされたんです」
この気付きから、社会をより良くするためのカギとして「結び目の創造」に目を向けだしました。
「それぞれに長所があって、短所がある。それは国同士も、人同士も同じです。良いところや得意な部分を持ち寄って、悪いところや苦手な部分を補い合えば、全体としてより大きな価値を提供できたり、自分だけでは気づけなかった気付きを得ることもできたりします。苦手分野をマイナスと捉えず、得意も苦手も、それすらもさまざまな個性として組み合わさることで、集合体の価値がより大きくなる。『つながり』があることでそんなチャンスが増え、昨日より今日が少しでもいい日だ、そんなふうに思える日が1人ひとりにとって増えたら良いなと思っています」
とはいえ一方で、誰かとつながりたい、何かとつながりたいと思った時に、誰もがすぐに目的とするものとつながれるわけではありません。一人でできる範囲には限界があるし、住んでいる場所や環境によって、得られる情報量にも差が出てきます。
吉田さんは例え話を用いて説明します。「道で例えるなら、『目的地はここ』とか『こっちへ行きたい』と思っていても、そこに道自体なければ、進むことはできません。あるいは道はあったとしても、標識や地図がなければ、道に迷ってしまうかもしれません」。
「その道を進むのか進まないかは、その人自身が決めることです」とした上で、「ただ、『ここへ行きたい』『こっちへいく方法を知りたい』と思った時に、分かりやすい道や標識を用意して、目的地に到着しやすくしてあげたい。道や標識をつくることで、本人の可能性を引き出してあげたいというのが、私の思いです。リジョブが運営するプラットフォームは、まさにそのための道や標識の役割を果たしていて、仕事を通した自分の夢を実現できる人を増やしていくことに価値があると思っています」
■「結び目」が、問題解決の糸口に
「私がリジョブに対して常々思っていることは『組織全体で社会への価値貢献、ビジョンを実現していきたい』ということです」と吉田さん。
このコロナ禍の中、新卒学生の就職活動も、例年通りとはいきません。平常時に比べ、人に会ったり説明会へ参加をして話を聞く、といった機会もおそらく減少しています。そこでこのような時だからこそ、学生の転機となるようなサマーインターンを創りたいと思い、自らかかわりたいと手を挙げました。
吉田さん自身が、幸せになるための働き方やNPO、行政、企業とどのセクターで働くべきか悩んでいた経験があったので、インターン企画を考えるときに、その悩んだ経験を生かしました。
すると、その思いは学生からも共感され、オンラインで実施したにも関わらず参加者満足度100%を達成しました。
「私が大事にしているのは『全体最適(自部署だけの最適を求めるのではなく、組織や社会全体にとっての最適な行動を実施していくこと)』です。このサマーインターン企画であれば、ひとりでも多くの学生たちが「どんな形の社会貢献が自分に適しているか?」を考え、一歩を踏み出すきっかけを創ったことが、結果としてリジョブとは別の道を進むことになったとしても、めぐり巡って社会全体を一歩明るくすることにつながるのではないかと思っています。そして、『これはあなたの仕事』とか『こうするべき』などと型にはめるのではなく、常に広い視点で柔軟に、会社に対して、社会に対して、解決したい課題に対しても『自分はどう動いた方が良いんだっけ』を考えて行動に移せる環境が、リジョブにはあります」
■神奈川・真鶴町でサテライトオフィス
今の時代、国境は入り乱れ、社会問題も複雑化して、それぞれ単体では解決できません。一つの国だけ、行政だけ、企業だけでは問題を解決することが難しくなっています。
リジョブでは、2015年からフィリピンでセラピスト養成講座を開き、現地の若者に雇用創出の機会を与えるCSV事業「咲くらプロジェクト」を行っていますが、この事業のパートナーに選んだのはNPO。現地で25年以上、草の根で活動してきたNPO法人アクションと組むことで、縁もゆかりもなかったフィリピンでの事業を軌道に乗せることができ、セラピスト技術を学んだ卒業生は500人を超えました。
「状況に合わせてその場その場で手を組みつながり合って、互いの長所は生かし、短所はカバーし合って協力しながら、共に問題を解決していく。一つの枠にとらわれず、その都度柔軟な視点を持つことで、幅広い選択肢が得られるのだということ、行き詰まったように感じる時も、角度を変えて見ると、実は他の可能性や方法があるんだということを、リジョブでの仕事を通じ、『結び目』をたくさん作っていくことで提案していくことができると思っています」
新たな取り組みとして、行政との連携も始めました。2020年3月に神奈川県真鶴町にサテライトオフィスをオープンしました。
この事業の発案者は入社3年目の若手社員。リジョブでは若手社員向けの新規事業を考える合宿を毎年行っています。チームに分かれてプランを考え、競うもので、2018年に勝ち残ったのがこの事業です。「地方の過疎」と「都市に一極集中する働き方」の二つの課題の解決を狙って企画されたものでした。
サテライトオフィスを出す場所を探すために、自治体の企業誘致マッチングイベントに参加した際に、真鶴町と出会いました。ほかの自治体と一線を画していたのは、真鶴町が「仲間」を集めていたところ。
多くの自治体が企業を誘致する時には、「補助金」をアピールするのですが、真鶴町は「補助金は出さないです」と言い切りました。その理由は、「ともに真鶴を盛り上げる仲間を求めに来たから」と語ります。
「お客様」ではなく「仲間」を求めるこの姿勢が、リジョブのソーシャルビジョンである「人と人との結び目を世界中で増やし、心の豊かさあふれる社会を創る。」と重なり、真鶴町に出すことを決めました。
真鶴町にある古民家を格安で借りて、サテライトオフィスにリノベーションしました。
東京では求人を募集してもなかなか人が集まらないような職種もある一方で、地方では求人自体がなく、若い人口が都市へと流出しています。地方と都市で足りないものと溢れているもののマッチングを図ります。
真鶴町での取り組みが功を奏せば、他の自治体にもこの取り組みを広げていける可能性も出てきます。
真鶴町に行ったことがある吉田さんは、「久しぶりに地元に帰ったように、田舎ならではの人とのつながりや時間の流れにホッとしたり、いいなと思うことがしばしばあります」と語ります。
一方で、「これまでの世の中は、時間の流れが速い場所に居続けるか、ゆっくりとした時間の中に居続けるかの二者択一の状況でした」と述べます。
真鶴サテライトオフィスでの挑戦を通すことで、「仕事としてはスピード感ある中に身を置きつつ、普段はゆったりとした時間の中で過ごすといったライフスタイルの選択が可能になると思います」。
そして、「それによって、人々の人生にとっての選択肢が増えることが素敵だと感じますし、これからも『私たちだからこそできること』を事業化していきたい。社会のために何ができるのか、そのための最善策を考え、突き進んでいく組織でありたいと思っています」と思いを語ります。
入社して5年が経ちましたが、自身の成長にも手応えを感じています。「リジョブに入社し、仕事を通じて大きく成長させてもらっていることに満足しています。会社としてできることも広がり、成長を一歩一歩肌で感じながら、次は何をしようかと考えるとワクワクします。これまではマーケティング担当や社長室メンバーとして、主にリジョブの事業づくりに向き合ってきましたが、今年からは、新しくリジョブグループとなったリザービアの組織づくりを担当することになりました。チャレンジの連続ですが、毎日刺激があって、仕事に飽きることがないですね。さらにそれが自分のビジョンの実現にもつながっているので、なおさら楽しいですね」。
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