――被災地取材を通して今の被災地の課題は何だと感じましたか。それを受けて私たちが今から出来ることは何だと思いますか。

末吉:多くの人とお話をさせて頂いて感じたことは、継続的に新しい風や空気を入れていかなければいけないということです。被災された街をどう復興していくか構想を練るときには、継続的にその被災地を支援している人も一緒に案を出していくべきでしょう。

継続的に被災地を支援している人は、目には見えませんが被災地にいる方の精神的な力になっていました。家や家族など全てを失った人は同じように被災した人に悲しみや悩みを打ち明けられないでいます。相手のことを気遣ってしまうようです。感情を閉じ込めてしまい、一度も大泣きしたことがないとおっしゃっていました。

しかし、そんな状況でも被災地以外から来てくれた人との交流には励まされ、継続的な関係ができると悩みも打ち明けることが出来ると目に涙を浮かべながらお話して下さいました。

祈ることの原点はエシカル、世界の子どもたちから教わること

――継続的に被災地を訪れて支援をすること以外にできる支援として、現地で生産された商品を買うという手段があります。復興ビジネスとフェアトレードの関係性をどのように考えますか。

末吉:継続的に被災地へ足を運ぶことが一番良いのですが、多くの人はそうはできません。そこで、被災地で作られた物を買うということも一つの支援です。
例えば、南三陸町で実施されている「南三陸復興ダコの会」はそのロールモデルになるのではないかと思っています。

このプロジェクトはもともと南三陸町の観光PRのために作られたグッズを復興のシンボルとしています。南三陸町でよく獲れたタコにもじって「置くとパス(合格)する」という意味で受験生の合格祈願として現在2万個以上売れています。

南三陸復興ダコの会、入谷Yes工房にて。写真提供:ピープル・ツリー


ポジティブなイメージで、南三陸町ならではの商品をアピールしたことが成功の要因なのかと思います。さらに、実際にこの商品を買って合格した受験生から「ありがとう」という感謝の言葉をたくさん届けられています。

今までずっと励まされていた人間がそのような言葉をもらい、今まで不確かだった自分の存在意義を明確に感じることができて、その子のためにもっと頑張ろうと思えるようになったとおっしゃっていました。消費者と生産者の顔が見える関係性を作れたことは現地で働く方にやりがいを持たせています。

このことは、発展途上国でフェアトレード商品を製造している方もおっしゃっていました。

——自身の著書『祈る子どもたち』(太田出版)では世界中で祈る子どもたちを見て、祈ることの原点に立ち返る大切さを説いています。震災からちょうど1年が経過して、関心が薄れている今の日本に伝えたいことはありますか。

末吉:世界中の子どもたちの祈る姿を見ていて、祈ることの原点とはエシカルな概念と似ているものだと感じています。

例えば、ある国では貧しい村で暮らす5歳の子どもが、もっと貧しい暮らしをしているお友達に対して、美味しいご飯が食べられるようにと祈っています。
そして、植林をしている子どもは、この木が育ってみんなが美味しいお水を飲めるようにと祈っています。

このように、自分のために祈るのではなく、他者のために祈っている光景を多く見ました。争いが絶えず、自分一人でも生きていく事が難しい地域にいるにも関わらず、他者への想いを大切にしている子どもたちから学ぶことは多いにあります。

この姿勢は日本では忘れられてしまったものだと感じています。震災から一年が経過しようとしている今、多くの日本人に、誰かのためにという想いをもう一度思い出してほしいです。




末吉里花(すえよし りか)

フリーアナウンサー
TBS系『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターほか、オーガニック・コンシェルジュ、オーガニックライフスタイリストの資格を生かし、司会やレポーターもこなす。著者に、『祈る子どもたち』(太田出版)。フェアトレードや環境問題に取り組む活動も積極的に行う。2012年より1% for the Planetアンバサダーに就任。