TBS系列「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターやオーガニックライフスタイリストの資格を生かして様々なイベントの司会を務めるフリーアナウンサー末吉里花さん。今年2月の取材で「完全に見放された」という被災者の声を聞き、被災地の現状を訴える。(聞き手・オルタナS特派員=池田真隆、写真・オルタナS特派員=森本洋子)

――今年2月に宮城県石巻へ行かれました。そこで訪れた仮設住宅で、「ニュースで知ること以上のことを知ることができた」そうですね。

末吉:私が訪れたのは15世帯程が集まっている小さな仮設住宅です。住んでいる方のほとんどが高齢者でした。印象的だったのはそこの方がおっしゃっていた「私たちは完全に見放された」という言葉です。

石巻は多くのボランティアの助けもあり、すでに道路や建物などのいくつかは復旧されています。しかし、20世帯以下の仮設住宅の現状はひどいです。ボランティアや市役所からの支援の手が届かずに孤立しています。

仮設住宅の方々が助けを求めて、ウェブサイトに書き込み、ようやく支援団体と巡り会えたそうです。

被災地でインタビューをする末吉さん。写真提供:ピープル・ツリー


――実際、仮設住宅の中に入られて様子はどうでしたか。

末吉:私たちは高齢者夫婦で暮らす仮設住宅を訪ねました。その仮設住宅は建設された場所も配慮されておらず、一日に30分しか陽が当たりません。木がうっそうと繁る中に建設されていて湿気もひどく、一日中干していても洗濯物が乾かないこともあります。

壁が薄いので隣の人の声が丸聞こえで、常に誰かに聞かれているのではないかと思ってしまいストレスがひどいと聞かされました。さらに、床は何部屋も長い一枚板でつながっているので端の部屋の足音が反対側にある端の部屋まで響いてきます。なので、夜中トイレに行く足音でいつも起きてしまい、熟睡できたことがないとおっしゃっていました。

コミュニティの問題もあります。仮設住宅に住んでいる人々はそれぞれ異なる場所から来ているので、顔見知りではありません。ですから、お互いの悩みを打ち明けられません。

そして、当分もとの家が何年後に建つかは分からないので、何年ここに住めばいいのか分からないという不安があり、長期的な目標が立てられず何かのために生きるということへの目的を失っているように感じました。

惟一の救いである親戚も、仮設住宅に移れたということで安心してしまい、なかなか助けに来ていないようでした。

また、差別的なことも起きています。仮設住宅にお住まいの方々が外へ出かけて街の人と近所話をするときでさえも、服装や雰囲気などから「仮設住宅に住んでいますか」と声を掛けられることが多いそうです。言われた方はすごくショックを受けるとおっしゃられていました。

全てを失った人こそ、悩みを打ち明けられない

――福島で開催された「放射能から命を守る全国サミット」にも取材に行かれていましたが、福島の方はどのようにして放射能から身を守っていますか。

末吉:サミットの参加者はお子さんを持つ母親世代が多かったです。一言でいうと不安だらけという印象を受けました。母親は子どもたちに何を食べさせていいのかわからない毎日を過しています。福島から離れることも単純なことではありません。高齢者がいる家庭や、仕事の事情で簡単には福島から引っ越すことができていませんでした。

メディアの無関心にも驚かされました。福島のサミットに来ていた日本メディアは福島の地元メディア1社だけでした。海外メディアは複数来ていたので、なぜ日本メディアが来ていないのかと、不思議に思っていました。


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