三井物産(東京・千代田)は、今年3月に開催されたインテグレックス(東京・渋谷)が運営する「『誠実な企業』賞2012」で優秀賞を受賞した。しかし、同社は今年1月にスイス・ダボス会議で開催された世界で最も無責任な企業を選ぶ「パブリック・アイ・アワード(通称:世界最悪企業賞)」で「世界最悪企業」に選出されたヴァーレ社(ブラジル)と2003年から戦略提携を結んでいる。

ブラジルに本社を置くヴァーレ社は世界の複数国に支社を持つ














「誠実な企業」賞とは、企業の社会的責任、企業倫理、コンプライアンス、内部統制などに優れた取り組みを行っている企業を選出して表彰することを目的としている。インテグレックスが2011年下期に行った全上場企業約3600社を対象とした調査を基に選出された企業が、審議される。

優秀賞に選出された三井物産とヴァーレ社は2003年から戦略的パートナーとして連携している。現在では三井物産の14営業本部中11本部で共同プロジェクトを進め、ヴァーレ社の取締役会に役員を派遣している。ヴァーレ社はブラジルに本社があり、鉄鉱石の生産量が世界最大の総合資源開発企業である。

ヴァーレ社の世界最悪企業受賞理由として、過去60年間に渡る人権侵害と自然破壊を繰り返し行ってきたことが挙げられる。さらに、アマゾンの熱帯雨林の中心部に建設中のベロ・モンテ・ダムが完成すれば約4万人の現地住民が強制避難を強いられ、生態系にも深刻な影響をもたらすことから、25041票(総投票数88766票)の最高投票数を記録した。

パブリック・アイ・アワードはインターネットで誰でも投票できる仕組みで、NGOベルン・デグラレーションが主催している。今年は特別ゲストとしてノーベル経済学賞受賞者ジョセフ・スティグリッツ氏が招かれた。

「誠実な企業」賞審議会委員長を務めたENアソシエイツ(東京・千代田)の長友英資代表取締役は「審議会では誰もそのような事実(三井物産とヴァーレ社が提携していること)を認知していなかった。どのような対応を取るかはわからないが、いずれにしても、他の審議委員にこの事実を知らせたい」と話した。(オルタナS副編集長=池田真隆)