若手アーティストの登竜門として知られる「アートアワードトーキョー丸の内」。2012年グランプリは、自らの足をモチーフにした作品を発表し続ける東京芸術大学大学院卒業の片山真理さん(24)に輝いた。

「おしゃれすることで、リハビリが進み、外に出られるようになることもある」(写真提供:アートアワードトーキョー丸の内2012実行委員会)


作品名は「ハイヒール」。片山さんは生まれつき両足とも膝下の太い骨がなく9歳で切断。理想の足を装着した写真とハイヒールを履いた写真の二つのポートレートを中心に、足をモチーフにしたオブジェ等を飾り、体への思いを表現した。

アート制作と並行し音楽活動も行う片山さんは「ステージに立つなら、ハイヒールを履きたい」と思い立つ。そこでアメリカで一社だけが作っている足首から下をハイヒール用に取り替えられる義足を取り寄せた。

「ハイヒールでステージには立てました。ですが、市販の靴が硬い義足に負けてしまって、一晩で壊れてしまいました」

日常でも履き続けられるハイヒールが欲しい。関東各地のオーダーメイドの靴屋、リハビリ施設、靴専門の理学療法士等を訪ねた。しかし、わかってきたのは福祉の「装い」の現状だ。

「義足に色をつけたい、レギンスを履ける義足を作りたい――。地方では、そんな要望すら『必要ない』と自治体や技師装具屋に聞いてもらえない。『歩ければ十分』と」

地方で暮らす義足や装具を使用する人たちにも話を聞いた。「不自由で当たり前」と痛みのある義足にあまんじほとんど動けず暮らす人、車椅子の大がかりな固定ベルトが恥ずかしく閉じこもりきりの人。義肢装具の格差にショックを受けた。

「義足では無理だと思われていたハイヒールでも、ちゃんと歩け、生活できますよと声をあげたい」

そんな思いで作品を作った。現在使っているハイヒールは特注の12センチ。装着部分は堅く厚い生地で作ってあるが、ヒール部分は軽い市販のものだ。他の靴やハイヒール用ではない義足と変わらない歩きやすさだという。

展示は東京駅の地下通路である行幸地下ギャラリーで5月27日まで開催。11:00~20:00(入場無料)。(遠藤一


片山真理 http://shell-kashime.com/

アートアワードトーキョー丸の内 http://www.artawardtokyo.jp/2012/