復興の象徴として「希望の1本松」と呼ばれた、岩手県陸前高田市の一本松。その子どもである松ぼっくりから取れた種子の成長の世話をしていた住友林業筑波研究所では、接ぎ木から3本のクローン苗、種子から18本の実生苗、計21本の苗木育成に成功し、現在も順調に育っている。

陸前高田市の1本松から生まれた子どもたち


3月11日の津波で壊滅的な被害を受けた高田松原7万本の中で奇跡的に一本だけ残った松は、被災地域の人々の復興へのシンボルとして複数のボランティア団体らなどからなる「希望の松プロジェクト」によって見守られ続けていた。

しかし、去年12月、海水で根が腐っているとして「高田松原を守る会」が保護を断念していた。

「希望の松プロジェクト」チームは、造園会社や学識者など57名の技術者で構成され、後継樹の育成を手がけた「後継樹育成チーム」には住友林業から計3人が参加していた。

2011年4月22日に一本松の枝から松ぼっくりを採取し、住友林業筑波研究所で育てていた。この種の所有権は陸前高田市側にあり、筑波研究所ではボランティアとして世話していた。

発芽した苗木は、全長5.5センチに伸びて若葉の緑が生えている。

住友林業筑波研究所の中村健太郎・主席研究員(45)は「最初の種子が発芽した時は、ただただ嬉しくて、思わずガッツポーズをとってしまった。最近では、松らしい新葉も開き始め、少しずつですが 自立し始めている。ただ、今もそうですが、陸前高田に里帰りさせることができるか、毎日が不安との戦いである。今後も、陸前高田や岩手県、そして全国で復興支援を行っている方の期待に応えることができるよう、プロジェクトメンバーの方々やチームメンバー、そしてチビ松達と一緒に頑張っていきたい」と話す。(オルタナS副編集長=池田真隆)