東日本大震災発生から間もなく1年と3カ月。発生直後に比べると、被災地支援の動きがやや鈍化しているようにも見える。しかし未だ不安を抱え、慣れない暮らしを強いられている人たちが大勢いる。
その長引く避難生活でストレスを感じている人たちに、ハンドマッサージで心身をほぐしてもらおうと、福島県の避難所や仮設住宅で、自らを心人(こころびと)と称する女性たちが奮闘している。1年間で1万人を目標に、心温まる時間を贈る「心人プロジェクト」は今、始まったばかりだ。
プロジェクトは大阪の老舗化粧品メーカー、ナリス化粧品(大阪市)の美容スタッフが、東日本大震災を受けて、自分たちも何かしたいという一人ひとりの想いが結集し、発足した。彼女たちが被災地で行うハンドマッサージは短時間で気軽に体験できるうえ、手と手が触れ合うことで緊張を緩和し、心身のリラックスに繋がる。さらに、自分でマッサージを日常生活に取り入れることによって継続的に日々のストレスや疲れを癒し、家族、友人に試すことでコミュニケーション活発化の相乗効果も期待できるという。
初回の活動となった5月24日、福島県いわき市の好間工業団地の仮設住宅。ナリスビューティーアドバイザーと呼ばれる女性6人が、避難住民40人に無料のハンドマッサージを施した。する側もされる側も、自然と笑顔になるのがハンドマッサージの魅力だ。
プロジェクト責任者の谷さんは「誰もが最初は緊張気味で顔も固い印象だったが、手を触れ、話を交わすうちに自然に肩の力が抜け、表情も柔らかに。被災した話や日頃の悩みなどを語って下さる方もいた。触れることで、不思議と安心感を生み出して、硬くなった心を開く効果があるようだ。」と語る。
近年、医療・福祉の現場で注目されている「化粧療法」。具体的にはハンドケア、メイクアップなどスキンシップを通してリラックスしながら、自信や満足感、自己肯定感などを手にすることを目的とした生理的、心理的ケアを指す。
ナリス化粧品には長年、このテーマを医療機関 ルイ・パスツゥール研究所と共同で研究し、論文発表の実績がある。そして、エステを基にした美容技術を持つスタッフもいる。こうして、同社にしかできない支援活動が生み出された。
「被災地が抱える様々な問題に対して、私達の活動は根本的な解決策にはならないかもしれないが、この活動を通じて、ほんのひと時でも日頃のストレスを忘れる時間をプレゼントできれば」と、谷さん。創業80年の歴史を持つ在阪企業の、経営資源を活かした持続可能な活動に今後も注目したい。(オルタナS関西支局特派員=土井未央)
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