腕、脚、胴体の内部――。欠けた身体の代わりに義肢装具をまとい、優美に装う少女たち。緻密なレース画を思わせる絵画の個展が東京・表参道にある「space yui 」で9月20日から開催されている。
作家は須川まきこさん。本職はイラストレーターである。須川さん自身も、作品の少女たちと同じように、右脚を股関節から切断している。
2005年に血管肉腫と告げられ、悩む間もなく手術。初めて義足を見た時は「こんなゴツいのをつけるのか」とショックを受けた。
「でもだんだんと、こんな機械的なものを体の一部にする、という違和感が面白く感じられてきて。これは絵になるな、と思った」
もちろん不安も大きかった。
「どこにも行けなくなるのではないか。仕事も制限されてしまったり、転職しても業種が限定されてしまったりするのではないか」
入院中のベッドで義足の少女の絵を描き始めた。
「描いた女の子たちを見て、綺麗だなとか、カッコいいなと思えたら、自分の身体も受け入れられるのではないか」
自分にしか描けない絵で、コンプレックスを克服したかった。自分の義足を嫌がっていた女の子が「私もこんな服を着てこんな風になりたい」と言ってくれたこともある。
「義足を作り直すまでは、ワンピースを着ると義足のラインが出てしまうなどファッション面でストレスがありました。絵の女の子たちは私の理想ですが、義肢装具も『こんなふうだったらいいな』と思うもの。義肢装具士さんや、全く義肢の世界を知らない人たちにも興味を持ってもらえたら」
今回の展示は、4月に発売された画集「Melting」(アトリエサード)にちなんだもの。
実は日本に先駆けて、美術の本場イタリア・ローマで6月に開催されている。これまでもアメリカで展示が行われたり、海外の雑誌やサイトで取り上げられたりするなど、国際的な評価は高い。
個展は、9月29日までの間、11時から19時(日曜休館/最終日17時)まで開催。須川さんは昼過ぎから、全日在廊予定だ。(遠藤一)
スペースユイ:http://spaceyui.com/
Ladies’ Time (須川まきこ公式サイト)
http://www011.upp.so-net.ne.jp/makiko/