現在日本では、年間に約20万頭にのぼる犬猫が保育所で殺処分されている。殺処分されている犬猫の1〜2万頭は、人に噛み付くや、むやみに吠えるなどの行動が原因で、保育所に持ち込まれている。

人と動物の共生センター理事長の奥田順之氏は、「誰もはじめから捨てたくて飼ったわけじゃない。 育て方を知らなかった、接し方を知らなかったばかりに、人も犬も苦しみ、そして、最悪の選択を選ばざるを得なかったのだと思う」と話す。

望んで迎えられた大切な家族はなぜ捨てられてしまうのか


この飼育放棄の問題に対して、子犬の義務教育をコンセプトに、飼い主に犬の適切な飼育方法を教える活動「子犬と飼い主の義務教育プロジェクト」が、岐阜で行われている。活動を行っているのは、人と動物の共生をサポートする施設ドッグ&オーナーズスクールONELife(ワンライフ、岐阜・岐阜市)である。

飼育放棄根絶を訴えるポスターでの全国普及活動や、同施設での子犬育てセミナーを実施している。セミナーは毎月第2、第4日曜日に実施され、犬猫の成長に合わせた飼育方法を教えている。

犬猫のしつけは、生後約1年までの社会期と若年期とされる精神発達段階が重要だとされている。犬猫にも人間と同じように、精神発達、精神成熟の時期がある。

社会期は、生後4週から12週に迎え、人や犬、車や自転車など、物・事・人に慣れる時期である。若年期は、生後13週から1年に迎え、自我が芽生え、性格が決まる時期である。

犬猫の心の発達には、社会期に適切な方法で、多くの物・事・人に刺激を吸収させて慣れさせること。そして、若年期に適切な関係性をつくり、自立を促すことが大切とされている。

社会期に様々な物に触れることが不十分な場合、攻撃性が高くなり、人や犬や車などに対して警戒心を強く持つようになり、気質の問題を抱えることになる。

若年期に飼い主と適切な関係性作りができなかった場合は、甘えや依存から咬むようになり、散歩中に他の犬に過剰に攻撃的になり、関係性の問題を抱えることになる。

平成22年度、全国の行政組織で引き取られた犬の数は8.5万頭(第五回動物愛護管理基本指針)にのぼる。年間100万頭の犬が新しく家庭に迎えられているので、およそ10頭に1頭が飼育放棄されている現状である。

同プロジェクトの代表も務める奥田氏は、「最近、癒しを求めて子犬を買うペットブームがきているが、飼い主が一方的に犬に癒しを求めてしまっては、良いしつけができず、犬にストレスを抱え込ませる原因となっている。飼い主と子犬の義務教育は、犬にストレスを掛けない方法でのしつけや、飼い主としての自覚や責任も教えることを心がけている」と話す。(オルタナS副編集長=池田真隆)


子犬と飼い主の義務教育プロジェクト