アジアをはじめ、経済成長が著しい地域では「都市化」が国民の所得増大に大きく貢献している。アジア諸国は工業化を推進し、いまや一次産品よりも、工業製品を輸出するようになった。政府は投資を誘致し、モノづくりを担う工場は多くの場合、都市部またはその近郊に建てられる。都市部の住民はそこで働き、かつてより良い収入を得る。
アジアの経済成長はこうしたシナリオのもとで達成されてきた。ところがアフリカの構図は違うという。10月4日付ガーディンは「都市化はアフリカの経済発展を加速していない」との記事を掲載した。
アフリカもアジアと同様、都市人口は急速に増えている。ただその中身をみると相違点が浮かび上がる。アフリカでは世界一高い出生率を背景に、都市部の人口は確かに多くなっているが、アジアほど、地方から都市への人口流入は起きていない。全人口に対する都市人口の比率も、アジアのほうがアフリカより圧倒的に高くなっている。
近代化と開発について考える場合、経済成長にとって都市化は不可欠な要素とみる向きがある。人口が集中する都市部では、人的ネットワークも強く、工業化に向かってイノベーションが起きやすく、また生産のスケールメリットも出るというのがその理由だ。
世界銀行が発行する「世界開発報告書(WDR)2009年」も、開発を進めるうえで果たす都市化の役割を強調。都市部の労働者のほうが、地方の労働者と比べて付加価値の高いモノを生産する、と指摘している。アジアの多くの都市では実際に、製造業を中心にフォーマルセクターが数百万の雇用を創出し、経済成長をけん引してきた。
ところがアフリカでは、こうした都市化の恩恵はあまり受けていないという。その理由を探ると、アフリカは労働力の安さでは中国やベトナムに対抗できるものの、それ以外の面では投資家を呼び込む環境が整っていないという現実がある。インフラ不備は深刻で、長時間の停電が頻発するなど電力供給は不安定。教育を受けた労働者も不足している。
こうした実態もあって、アフリカでは、アジアのように大規模に工業化は発展していない。代わりに経済のインフォーマル化が進み、都市部の住民の多くは、インフォーマルな仕事に就くのが一般的。労働の対価は低く、十分な収入を得ることはまれだ。
最近の調査によると、アフリカの多くの国で都市化の傾向は鈍化している。雇用を求めて都市にやってきても生活できず、地方に戻る人が増えているからだ。
アフリカの国内総生産(GDP)の伸びは、石油やガスなどのエネルギー資源をはじめ、農業や鉱業、林業などの天然資源によって達成された部分が少なくない。工業化をてこに成長を遂げてきたアジアとは違う。
人的資源とインフラが集中するアジアの都市化。これに対してアフリカの都市化は人口こそ多いが、逆にいうとそれしかない。“アフリカ流の都市化”が経済発展を加速するのは現時点では難しいといえそうだ。(寄稿・開発メディアganas)
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