今月10日、「CSRは何の略?Microsoftやドールなど企業によって異なるCSRの名称」でも紹介したドールはCSRを、CR&S(Corporate Responsibility & Sustainability)としてグローバルに積極的な活動を行っている。
日本のドールでは総務CS推進部でCR&Sを行っている。専任担当者は2名。国内企業の大半のCSR部署は、人数が少ない。CSRは、日本ではまだ10年目の比較的新しい概念なので、答えのない中、模索中という企業が多いのだ。ドールもそのひとつである。
ドールの日本でのCR&S活動は5本柱で取り組んでいる。
①食育
②社会貢献
③環境保全
④安心・安全
⑤ES(従業員満足)
今回は、この中でも②の商品にならなかったバナナの提供に着目した。バナナの提供が行われている現場のひとつ、東武動物公園をドール管理本部総務CS推進部西川美希さんと訪ねた。
輸入青果物は、日本に着いてから店頭に並ぶまでに何度もチェックを受ける。例えば、入港時には植物検疫法に基づいた植物検査が実施される。品質として問題がないと判断されても、検査員が触れているためその箱のバナナは商品として販売することができず、以前は全て廃棄されていた。
そこで、ドールでは2010年からフードバンクや動物園への提供を始めた。フードバンクとは、食品企業の製造工程で発生する規格外品などを引き取り、福祉施設などへ無料で提供する団体・活動である。
参照:農林水産省
(http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/foodbank/index.html)
今回取材をした東武動物公園には、週に2度、1回5箱程度のバナナを提供している。バナナは、ゾウ・イグアナ・サル類・レッサーパンダ・南国出身の鳥などのエサとして使用される。
実は、ドールと同じ様に吉野家も、キャベツの外側をはいだものを、15年前から365日、1日190kg提供しているそうだ。(http://www.yoshinoya-holdings.com/csr/3r/reuse.html)
他にも、近所の農家や民家からお米や柿、栗、みかんなどが届けられることもある。最近では、地方自治体などからカンパンを多く受け取るそうだ。
サルたちは以前はドッグフードのサル版を食べていたが、調査を行った結果、サル用フードと同等の栄養をカンパンで摂取できることがわかったため、約6年前からサル用フードを全てカンパンに切り替えたそうだ。
昔ながらの、お裾分けの感覚で、企業・市民・自治体の間に良い循環が生まれる仕組みが自然とつくりあげられていた。
ドール担当者の西川さんは、「ドールの直接の顧客は量販店や市場。消費者はその先にいるお客様のお客様。それでもその先の先の人にまで目を向けたい」と言う。西川さんは、食育活動など多くの現場に足を運ぶことを重視している。
同社のCSR活動の今後について伺ったところ、「ご提供先はどこに送って、どういう声があったかのフィードバックをくれる。送るだけ、ではなくフィードバックの活用や、弊社としてより貢献できることはないか考えている」と話した。
人と人が触れ合う瞬間にこそ人は喜びや生き甲斐を感じるのだろう。CSRではよく、顧客の顧客、どこまで目を向けるかという議論もあるが、その先まで赴くことで、人の顔を見るからこそ見えてくるものがあるかもしれない。(オルタナS編集部員=山田衣音子)