2002年の「身体障害者補助犬法」施行から15年。法律で認められているにもかかわらず、補助犬と補助犬ユーザーへの店舗や病院への同伴拒否のニュースはなくなりません。その背景には補助犬への正しい理解の欠如と、「どうしていいか分からない」という困惑があります。補助犬について正しい知識を広め、補助犬ユーザーの人たちが気軽に入れるお店を増やすために活動するNPOを紹介します。(JAMMIN=山本 めぐみ)

■補助犬は「盲導犬」「聴導犬」「介助犬」の3種類

皆さんは、「補助犬」には3つの種類があることをご存知でしょうか。

視覚障がい者をサポートする「盲導犬」はよく知られていますが、そのほかに、聴覚障がい者をサポートする「聴導犬」、手足に障がいのある肢体不自由者、主に車椅子生活者をサポートする「介助犬」がいます。

左から、盲導犬、聴導犬、介助犬

現在、日本全国には約950頭の盲導犬、約70頭の聴導犬、同じく約70頭の介助犬がいて、ユーザーの日常生活をサポートしています。

■補助犬が未だ社会に受け入れられない現状

日本では、2002年に「身体障害者補助犬法」が施行されました。これは、障がい者の自立と社会参加の促進を目的に施行された法律で、スーパーやコンビニ、病院やレストランなどの不特定多数の人たちが利用する場所は補助犬を連れた障がい者も安心して利用できるということを定めています。

厚生労働省のほじょ犬「Welcome!ほじょ犬」ステッカー(左)と、兵庫県宝塚市の「ようこそ!補助犬」ステッカー(右)。法律では社会参加が認められているはずだが…

しかし、補助犬に対する理解が広まらず、出かけた先で「犬は困る」、「ほかのお客様の迷惑になる」などという理由で、入店を断られるケースが後を絶ちません。

国で認められているにもかかわらず、実際は補助犬を連れていると同伴拒否を受けてしまう現実。ここをなんとかしたいと、補助犬への理解と普及を目指して活動を続けているのが、NPO法人「日本補助犬情報センター」です。

日本補助犬情報センターの橋爪さん

専務理事兼事務局長の橋爪智子(はしづめ・ともこ)さん(44)によると、調査したところ、補助犬ユーザーの人たちのうち6割以上が、なんらかの同伴拒否をこれまでに受けたことがあるという結果が出たのだといいます。

■正しく知らないことが、理解が広まらない原因のひとつ

同伴拒否がなくならない理由として、橋爪さんは「補助犬法自体が知られていないことに加えて、障がい者に対する理解の低さや、補助犬自体が正しく知られていないことが原因」だと指摘します。

補助犬は、飲食店ではおとなしく待機。吠えたり、うろうろしたりして周囲の人に迷惑をかけることはない

「全国にはおよそ1,100組の補助犬と補助犬ユーザーがいるが、皆、40日以上にも及ぶ訓練を経て、国からの認定を受けた人たち。補助犬とペアを組んで衛生管理や社会でのマナーもしっかり学んだ上で、『このペアで社会参加できますよ』とお墨付きをもらったということ。マナーの上でも公衆衛生上も、補助犬ユーザーが責任を持って管理しているので、なんら問題はない。そのことがあまり知られておらず、受け入れ側の体制が整っていない」と話します。

■「補助犬ウェルカム!」なお店を増やすプロジェクト

そんな中、日本補助犬情報センターは、NPO法人MAMIE(大阪)・NPO法人essence(大阪)と協働で「補助犬ウェルカム!」なお店を増やす「補助犬とお店に行こう!」プロジェクトを進めています。

NPO法人essence(大阪)が作成した「補助犬Welcome」ステッカーをエントランスに貼ったお店(沖縄「Pain de Kaito(パンドカイト)」)

「『入店拒否された』というネガティブな側面に注目が集まりがちだが、実はお店のほうから『補助犬ユーザーにも気兼ねなく料理を楽しんでほしい』とか、『障がい者も遠慮なく遊びに来てほしい』という声も実はたくさんいただいている。
補助犬ユーザーの人たちが、当たり前にレストランで食事やお茶を楽しめて、かつ、そこから補助犬の理解が多くの人に広まっていくことが、このプロジェクトの目的。少しずつでも、補助犬がいることが当たり前の社会になっていけば」。プロジェクトについて、橋爪さんはそう話します。

「補助犬とお店に行こう!」のイベントにて(大阪「LE SUCRE-COEUR(ル・シュクレクレール)」)

■「補助犬とお店に行こう!」プロジェクトを応援できるチャリティーキャンペーン

チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」(京都)は、日本補助犬情報センターと1週間限定でキャンペーンを実施し、オリジナルデザインのチャリティーアイテムを販売します。

集まったチャリティーは、「補助犬とお店に行こう!」プロジェクトで、補助犬への正しい理解を広め、「補助犬ウェルカム!」なお店を増やすために、店舗に配布するパンフレットの作成のための資金になります。

「JAMMIN×日本補助犬情報センター」1週間限定のチャリティーデザイン(Tシャツのカラーは全8色。他にVネックTシャツやノースリーブ・パーカーなどあり)

JAMMINがデザインしたTシャツに描かれているのは、車椅子ユーザーを含むいろんな人と補助犬、そしてそれを迎え入れるシェフの足元。

“It’s all a part of my life”、「すべてが、私の人生の一部」というメッセージには、補助犬を連れて遊びに出かけ、楽しい時間を過ごすことも、当たり前のように補助犬がそこにいて、生活をサポートしてくれることも、特別ではなく当たり前のこと、という思いを表現しています。

Tシャツ1枚につき700円が、日本補助犬情報センターへチャリティーされます。販売期間は、9月4日〜9月10日までの1週間。JAMMINホームページから購入できます。

JAMMINの特集ページでは、補助犬についての詳しい解説や、補助犬と補助犬ユーザーの人たちが抱える課題について橋爪さんの詳しいインタビューを掲載中!
こちらもあわせてチェックしてみてくださいね。

補助犬を「当たり前」の光景に。補助犬法施行から15年、「ありがとう」が増える社会を目指す〜日本補助犬情報センター

山本 めぐみ(JAMMIN):
京都発チャリティー専門ファッションブランド「JAMMIN」専属ライター。JAMMINは「チャリティーをもっと身近に!」をテーマに、毎週NPO/NGOとコラボしたデザインTシャツを作って販売し、売り上げの一部をコラボ先団体へとチャリティーしています。

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