東日本大震災で起きた原発事故によって避難を強制された福島の区域内で、教職員たちは自身も被災者でありながら教育現場から逃げることは許されなかった。

映画のワンシーン


福島県教育委員会は、原発の影響で休校中の学校の教職員には「兼務発令」を出し、現任校に在籍しながら児童・生徒が転校した先で勤務するという体制をとった。

この結果、ちりぢりになった自分の子どもたちへのかかわりは思うようにできなくなり、避難先から兼務校への遠距離通勤を強いられる教職員も続出したという。

映画『私たちは忘れない-福島避難区域の教師たち-』(製作・ナレーター:湯本雅典/33分)は、そうした教職員のとまどいと現実を率直に記録したドキュメンタリーだ。

同映画の中で、広野町立広野中学校の教員・柴口正武さんは語っている。
「山形に最終的に避難したのですけれども、両親を近くの病院に連れて行くまでは、本当に申し訳ないのですが、自分の家族のことしか考えていませんでした」

南相馬市立福浦小学校の教員・大和田修さんは、こう語った。
「先生も被災者なのですね。それなのに、学校が始まると元の勤務校に呼ばれて仕事をしなきゃならないっていうのは、ものすごくひどい状況だった」

映画を製作した湯本さんは言う。
「15000人もの小中高生が県外に避難し、避難区域のすべての学校が休校¬になりながら、現場に張り付いて働き続けている教育労働者の現実はほとんど報道されていません。しかしここに、原発震災のもたらした被害の重要な一端があるのではないでし¬ょうか?福島の学校が本来あるべき姿に再生するためには、彼ら被災した教職員たちが人間らしい生活を取り戻すことが不可欠です。この作品が、その方途を探るきっかけになれ¬ば幸いです」

同映画のDVDは2000円(税込・送料別)で一般向けに販売されており、販売収益の一部は福島県教職員組合双葉支部、相馬支部にカンパされる。購入希望者は、製作者の湯本雅典さんまで。yumo@estate.ocn.ne.jp あるいはTEL:090-6039-6748。(今一生)


●映画『私たちは忘れない-福島避難区域の教師たち-』予告編