伊藤忠商事は市民とのリアルな対話を重視したCSRを行っている。
同社は、「総合商社が市民との対話へ動き出す、伊藤忠商事のCSRリアルスペースとは」で紹介した通り、9月26日に本社のある青山にCSRスペースを新設したが、それに先立つリアルスペースとして今年4月からスタートしたのが、キッザニア東京でのパビリオン出展だ。

キッザニアでは簡単な挨拶や自己紹介は英語で行う。

キッザニアでの活動を通じて、リアルな場での情報発信の重要性を感じたことが本社でのスペース開設に繋がっている。
今回は
1、 キッザニアのパビリオン
2、 NPO法人Kids Funイベントへの出展(11月10日六本木ヒルズアリーナでのイベント、第3回子どものためのジャズコンサート古野光昭フルノーツwith 寺井尚子に出展※注)
を訪ねた。

■キッザニアでの取り組み

キッザニアは、子供達が憧れの仕事にチャレンジし、楽しみながら社会の仕組みを学ぶことができる学びとエンターテインメント=エデュテインメントの施設。実在する企業がスポンサーとなった約60のパビリオンが並び、その中で90種類以上のアクティビティを体験することができる。
お仕事体験で稼いだ独自通貨の「キッゾ」を使って買い物や習い事をする。

パビリオンでのプログラムは、スポンサーとキッザニアが協議を重ね、形にする。

伊藤忠商事は、3つのプログラムをMOTTAINAIキャンペーンと共に提供している。1つ目がマイふろしきづくり、2つ目がエコバックづくり、3つ目として11月19日から新しいプログラム、マイはしづくりがスタートした。

年間約85万人の来場者を誇るキッザニアは、その6、7割がリピーター。そこで、3種類のプログラムを用意し、今後はこの3つを4ヶ月弱でローテーションして行く予定だ。

伊藤忠商事広報部CSR・地球環境室室長小野博也さんは、「商社という幅広く、子供達には少しわかりにくい事業をどのようなプログラムで提供するか考えた末、ものづくりを通じて環境への配慮も伝えることに至りました」と話す。

「総合商社として、グローバルベースで様々な社会的課題があること、そしてその解決に自ら参加するということを学んでほしいと思いました。社内ではもともとMOTTAINAIに取り組んでいるチームがあり、横断的に協力することで伊藤忠商事のCSR活動の5本柱の中の、「次世代育成」「環境保全」にもマッチしたこのプログラムができあがりました」と、竹内優子さん。

■キッザニアパビリオン:マイはしづくり

伊藤忠商事のロゴ入りエプロンと帽子を身にまとった子供達は、紙ヤスリやミツロウではしを丁寧に磨き上げていく。はしの素地は日本全土に自生している、イチイの木。マイはしには、名前等の好きな文字と、エコにまつわるモチーフを入れることができる。

参加費は植林活動『グリーンベルト運動』に寄付される。

 

キッザニアを訪れる子供の年齢層は幅広く、3歳〜15歳までだ。 小さい子には隣のお兄さんお姉さんが手を差し伸べる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ NPO法人Kids Funイベントへの出展:マイふろしきづくり

六本木ヒルズでのイベントブース

NPO法人Kids Funイベントでのブースでは、マイふろしきづくりのワークショップを提供した。再生ポリエステルのふろしきに、子供たちが思い思いのスタンプを押して行く。

作る前に、再生ポリエステルがどのように役立っているかなど、「MOTAAINAI」の精神を伝える。また、ふろしきを作らせるところで終わらず、結び方も教えることで、忘れられつつあるふろしきの文化も伝えている。

リピーターが多いのは、イベントも同じだった。その一日だけでも2、3度訪れ、友達やお母さんに、また愛犬用にまで作りたいという声もあったそうだ。小野さんは、「今後も機会があればイベントでのブース出展を行っていきたい」と話す。

スタンプの柄は、支援先のケニアをイメージしたものになっている。木のスタンプは、幹と葉が別々になっており、自分の好きな形の木を作ることができる。

竹内さんは、「子供たちは幹や葉を使って地面や月桂樹など私たちが想定していなかったような楽しい作品を次々と生み出すので驚きました」と語る。

親も自分の子供の発想力の豊かさに驚くようだ。

■ エコバックデザインコンテスト

そんな姿を見ていた伊藤忠商事は、「表彰してあげたらもっとやる気が上がるのではないか」と考え、エコバックのデザインコンテストを開いた。

意気込みとしてコンセプトも募集したところ、「教科書で勉強したMOTTAINAIの活動に自分が参加できるとは思わなかった」という感激の声も上がったそうだ。

また、表彰された子供の親御さんから、「子供はもともと何かやりたいというタイプでなかったけれども、この表彰をもらって自信を持ったと思います。背中を押してもらってありがとうございます」という手紙を受け取ったそうだ。

「頑張る子供の背中を押す」をテーマに行った表彰式であるが故に、感激した。と、キッザニア東京小林愛奈さん。

竹内さんは、「協賛することによってスポンサー側も学びが多いです。毎回ここを訪れるたびに、やって良かったな。と思います」と目を輝かせた。

■ 編集後記

商社のビジネスはB to B (Business to Business)なので一般市民との接点があまりない上に、川上から川下まで幅広い事業領域を持ち、大人でもわかり辛い。しかし、多岐に渡っているからこそ、次世代を担う子供達の豊かな発想力を引き出し、表現する場を提供できるのではないだろうか。自社スペースの伊藤忠青山アートスクエア、キッザニアでの固定パビリオン、イベントでの移動式パビリオン。それぞれの拠点での活動に注目したい。

(オルタナS編集部員=山田衣音子)

※注
当日のイベントの様子は
ジャズやものづくりで刺激する、企業と非営利団体の協働子ども教育
に紹介している。