——映画『よみがりのレシピ』では、在来作物を守るために、農家や学者、シェフなど、色々な人がつながっていきます。コミュニティーデザインの観点から、この映画の見所を教えてください。

山崎:人と人をつなげていくコミュニティデザイナーの観点からすれば、在来作物という放っておいたら、なくなってしまうかもしれないものを通じて、どういうふうに人がつながっていくかを見て頂ければと思います。

弱い存在を相手にすればするほど、人と人がつながって、その弱いものをなんとかして守ろうと手を結びます。在来作物はそういう役割を持っているのです。

しかし、思い返せば、江戸時代の頃は、在来作物は強い存在でした。人がケアしなくても主流であり続けました。しかし、今では人がケアしないと守れないものになってきているからこそ、在来作物を取り扱うという行為そのものが、人と人を結びつけているのです。

植物生態学の中では、どの植物が一番生き残るのかという議論をします。スギやヒノキではなく、野菜や果物ではないかといわれることがあります。

人間を利用できるからです。人間が食べていくために、野菜は量産や改良をなされます。自然に淘汰されずに残り続ける種は、人間に育ててもらえる価値を持った種だけなのです。

もし、植物側に脳があるとして、誰の行為を引き出せば、自分たちは繁栄していけるのかを考えた場合、戦略として、人間にアプローチできれば強いのです。

在来作物が人間に注目されているのは、彼らの戦略としては正しいと思います。人間は、在来作物によって手を結ばざるを得ない状況になっているのです。

コミュニティーデザインの立場からすれば、弱い立場である在来作物をめぐって、色々な人たちが協力して、刺激し合い、コミュニケーションを取る状態が見ていて非常に面白いです。

人間が健康のために、在来作物を守っているのですが、実は、在来作物が繁栄するために、人間を利用しているのかもしれません。そう考えると、すごく面白い関係ですよね。


山崎亮:1973/9/9
コミュニティーデザイナー/studio-L代表/公共空間のデザインに携わるとともに、完成した公共空間を使いこなすためのプログラムデザインやプロジェクトマネジメントに携わる。著書に、『コミュニティデザインー人がつながるしくみをつくるー』(学芸出版社)『コミュニティデザインの時代 自分たちで「まち」をつくる』(中公新書)

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