利用されているのはどっち? 山崎亮が読み解く人と在来作物の関係性(1/2)はこちら

労働と夢と趣味を重ね合わせていく

——事前準備を積む事によって、本質的な問題点に気づけると思います。近年、東京では、おしゃれでオーガニックを楽しむお店もでていますが、この流れでオーガニックが定着していくでしょうか。山崎さんは、どう見ていますか。

山崎:おしゃれでオーガニックは、本質的にズレていると思います。たとえ、東京で、おしゃれにオーガニックを見せても、在来作物が獲れた土からの距離が遠すぎます。あるいは、作物が獲れた水からの距離が遠いです。

育てている過程がオーガニックだったにも関わらず、地方から東京まで運んで料理しているということに、違和感を感じるようになってくるでしょう。動物の毛皮を着ることで、ステータスを感じていたが、時代が経つに連れて憐れに見えてくるようになってしまったように。



見え方が変わってしまうと、社会全体が不自然だよねという感覚になってきます。東京では、農地がないことはみんなわかっているのに、オーガニック野菜を使った料理ですといっても不自然に感じるでしょう。

一回転して、東京ではマクドナルドが「自然」にさえ見えます。東京とは、そういう土地なのだと捉えています。郊外住宅地に一戸建てを建てると効率が悪いので、超高層ビルに住んだ方が、東京における「自然」な住まいです。

なので、この土地でオーガニック野菜を使っても、すごく不自然に見えてきてしまいます。

おしゃれや健康の意味を含めて東京では発信していますが、これからは、それを獲れた土地で食べることの方が、気持ちが良いものだと思えてくるでしょう。今はまだ、その不自然さが、何かにくるまれて隠されていますが、そろそろしんどくなってくるのではないかな。

——東京の若者に、エコ、エシカル、ソーシャルな意識が定着できないことには、どのような問題点があると思いますか。

山崎:ワークショップではよく、お見せするのですが、大きな紙に3つの丸を描きます。「私がしたいこと」、「私にできること」、「地域が求めていること」の3つにわけます。

この3つの丸が重なった部分が、エコ、エシカル、ソーシャルな活動なら良いなと思います。その3つの丸が重なったことは、やりたいことで、できることで、地域にとってよいことなのですから。

やりたいことと、できることなら、それはまさに趣味です。どうせ行うなら、何かにとって良いことになった方がいいので、地域が求めていることに近づけることが重要です。

やりたいことで、地域が求めていることをしたら、できることではないので、夢に終わってしまうことがあります。

地域が求めていることで、できることでしたら、やりたいことではないので、労働になってしまいます。

労働と趣味と夢の部分を真ん中に集めていくと、ストレスレスな新しい運動が生まれていく気がします。



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