「被災地に雇用を生みたいと思った」と話す渡邉さんは、東日本大震災が起きた当時、会社員だった。週末の休みを利用して被災地を訪れ、ボランティア活動をしていたという。そうするなかで、被災者からの「仕事がない」という声を沢山聞いていたのだ。
震災から3カ月が経った2011年6月、渡邉さんは震災前から予定していた通り、会社を退職。日本の良いものを海外へ出したいという想いを元に活動を予定していたが、震災後「まずは、東北の良いものを海外へ出していきたい」という想いが強くなったという。
ボランティア活動を続けていくなかで気仙地域の椿の存在を知り、「それを利用して事業を創出できないか」と考え、「気仙椿ドリームプロジェクト」を発足した。
三陸沿岸部の気仙地域周辺は寒暖差がある土地柄の特性で、昔から良質の椿油が採れていたという。気仙の人々にとって身近な花でもあるツバキは、実の中にある種を搾ると油が採れる。昔から、主に食用に使われ、整髪料や肌の保湿としても使われてきた。
「椿油を使用した化粧品を作り、被災地発の商品として世に出していきたい」と、活動を開始した。渡邉さんの想いが伝わり、ハリウッド化粧品(六本木)とEn女医会の協力を得ることができたのだ。そして、プロジェクト第一弾の「気仙椿ハンドクリーム」が昨年12月、ついに発売となった。
■職人の心を動かした想い