シェアすることで、自分の成長につながると直感的にわかっている若者は多い。良い情報を得た時には、一人で独占するのではなく、周囲に伝える。若者たちはシェアすることで何を得たのか。ソーシャルメディアで情報を発信し続けるスプリー代表の安藤美冬さんと、ネット上で共感したユーザー同士で旅を作る「trippiece(トリッピース)」を運営する石田言行(いあん)さんに話し合ってもらった。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆)

安藤美冬×石田言行  私たちは独り占めではなく、シェアして成長する(1/4)はこちらから

石田言行さん(写真左)と安藤美冬さん


社会企業的な考えを持つ若者たち

安藤:トリッピースを起こす原動力になったのは、石田さんが気の合う友達が欲しかったことが大きいのでしょうか。

石田:そうかもしれないですね。もちろん、前提として旅が好きだからということはありますが。

トリッピースを立ち上げようと決心したのには、大学2年生時に行ったバングラデシュへのスタディツアーが大きく影響しています。

当時、NPOを立ち上げていたのですが、ソーシャルビジネスについて熱く語れる仲間が欲しかったのです。NPO仲間にもそこまで熱く話せる人はいませんでした。

ただ、バングラデシュに10日間行ったとき、一緒に行ったメンバーとは、1日中話していても全く飽きなかったのです。仲間ができて、同志ができた感覚です。自分が求めていたものは、これだと確信しました。

安藤:なるほど。志を同じくする仲間たちで楽しいことをシェアしたいという気持ちにはそういう原体験があったのですね。思ったのですが、10年ほど前、2003年頃からはじまった「起業家ブーム」に乗じてITベンチャーを立ち上げた人たちは、自分の欲求に向かっていた気がします。会社の規模を大きくして世の中を引っくり返してみたいなどの野心に溢れているように見えました。

それから年月が経った現在、今の若者たちは、ソーシャルビジネスを実践する社会企業的な考え方を持っている人が多い印象を受けます。

マイクロソフトでの高給や地位を捨ててRoom to Read(ルームトゥリード)を立ち上げたジョンウッドさんや、エシカルジュエリーによって宝石をめぐる児童労働などの搾取や貧困を無くしたいと活動するHASUNA(ハスナ)代表の白木夏子さん、世界でも最貧国のひとつであるバングラデシュと日本をつなぐマザーハウスの山口絵理子さんなど。自分の欲求だけではなくて、社会貢献を切り口に「世界をより良いものにする」というメッセージが多くの支持を集めています

旅は楽しいだけではなく、自分力を磨くもの

石田:社会貢献を切り口にしたビジネスが自分のためになっているということが前提ですが、なにより、自分が楽しいと思えるから、しています。お金を稼ぐよりも、「ありがとう」と言われることがうれしいものです。

ぼくが感じるITベンチャーの変化は、サービスの中身がよりリアルな世界へ近づいたことです。リアルな世界をよりよくしていきたいという思いを持った同世代は多いです。

昔のITサービスは、ウェブの世界で完結してしまうものが基本でした。しかし、今は、*O2O(*Online to Offlineの略称。オンラインでユーザーを獲得し、実店舗へ集客すること)といわれているように、リアルの世界を豊かにすることを目指しているものが多いです。

ウェブ上で人をつなげて、リアルな世界を豊かにします。人の繋がりを生む特徴を持つので社会貢献と親和性が高くなるのだと思います。宗教や国籍関係なく友達ができれば平和な社会に近づいていくように。

安藤:バングラデシュに行った時に、はじめてソーシャルビジネスを熱く語れる仲間ができてうれしかったとおっしゃったじゃないですか。私も同じような経験をしました。

それは、16歳と20歳のときに行った船旅です。2回とも「東京都洋上セミナー」「世界青年の船」というそれぞれ東京都、内閣府(現在)が主催する国際交流事業で、16歳では、北京、上海などに行き、20歳では、17カ国以上の人と1カ月半、船上生活を共にしました。

船の中で同性代の子たちと話していくと、これほどまでに真剣に世の中のことを考えているのかと、衝撃を受けた記憶があります。自分がこれから、どのように生きていきたいのか語れる仲間が見つかったこの経験は今も生きていますね。

石田:高校卒業のときに、母親に「お金を出すから海外周ってきなさい」と言われました。そのときには、魅力を感じず断ってしまったのですが、今、思い出すと行きたかったですね。もし行っていたら、おそらく人生変わっていたと思います。

海外での経験は、毎日が非日常です。話す相手や言葉、考え方は全く違います。そういう経験を、若い頃からできるだけ多く味わっておくことをお勧めしますね。

安藤:その通りですね。

旅は、サバイバル力を楽しく磨けるものだと思っています。例えば、何を持って、何を持っていかないのかの「取捨選択力」を磨くことにもなります。

例えば、旅先の目抜き通りにレストランが5軒並んでいるとして、「一番美味しい店はどこだろうか」と実験をするのです。お客さんの入り具合、メニューのラインナップ、店員さんの態度、軒先から漂ってくる料理の匂い。そうした「五感」をフル稼働させることによってお店を探す。決して、ガイドブックに頼らないことです。もちろん、まずかったりもするし、美味しかったりもするのですが、そうした試行錯誤が自分の感覚を養ってくれるのです。

旅は日常を忘れさせてくれるエンターテイメントなのですが、主体的にコミットしていくと、実は自分の力を磨いてくれるものなのです。


次回は、1月15日(火)に掲載予定です


安藤美冬:
株式会社スプリー代表
1980年生まれ、東京育ち。慶応義塾大学卒業 後、(株)集英社にてファッション誌の広告営業と書籍単行本の宣伝業務経験を積み、2008年には社長賞を受賞。2011年1月独立。ソーシャルメディアでの発信を駆使し、一切の営業活動をすることなく、多種多様な仕事を手がける独自のノマドワークスタイルがTBS系列『情熱大陸』で取り上げられる。また、NHK Eテレ『ニッポンのジレンマ』では30代の若手論客として、フジテレビ『Mr.サンデー』ではゲストコメンテーターとして出演。『自分をつくる学校』の運営、野村不動産やリクルート、東京ガスなどが参画する新世代の暮らしと住まいを考える『ポスト団塊ジュニアプロジェクト』ボードメンバーのほか、日本初のスマホ向け放送局『nottv』でのレギュラーMCや連載の執筆、講演、広告出演など、企業や業種の垣根を超えて活動中。2013年春創刊のシングルアラフォー向け女性誌 『DRESS』では、「女の内閣」の「働き方担当相」を務める。著書に7万部を突破した『冒険に出よう』(ディスカヴァー•トゥエンティワン)がある。
公式ホームページ:http://andomifuyu.com/
Twitter:@andomifuyu

石田言行:
株式会社trippiece代表取締役
1989年9月18日生まれ。中央大学4年。学生NPO法人うのあんいっち元事務局長
trippiece HP:http://trippiece.com/home
Twitter:@ishidaian
Facebook:http://www.facebook.com/ian.ishida


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