シェアすることで、自分の成長につながると直感的にわかっている若者は多い。良い情報を得た時には、一人で独占するのではなく、周囲に伝える。若者たちはシェアすることで何を得たのか。ソーシャルメディアで情報を発信し続けるスプリー代表の安藤美冬さんと、ネット上で共感したユーザー同士で旅を作るtrippiece(トリッピース)を運営する石田言行(いしだいあん)さんに話し合ってもらった。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆)
*安藤美冬×石田言行 独り占めではなくシェアして成長する(1/4)
*安藤美冬×石田言行 独り占めではなくシェアして成長する(2/4)
*安藤美冬×石田言行 独り占めではなくシェアして成長する(3/4)
——実体験をしたからこそ生まれる言葉には力があります。では、お二人にとって「体験する」とはどういうことでしょうか。『ウォールデン 森の生活』の著者ヘンリー・D・ソローは、「ワインを作ったことがなかった」と言っています。既存の液体を混ぜただけで、それは、「ワインを作った」とはいいません。何かを体験するとはどういうことだと思いますか。
安藤:端的に言えば、「自分の目で見て、耳で聴いて、足で歩くことによって、自分の思考のフィルターにかかったもの」だと思います。先ほど、「旅はあらゆる力を磨く」とお伝えしたように、ガイドブックを携え、誰かのフィルターにかけられて推薦されたお店や場所をスタンプラリーをして回るように訪ね歩いても自分の糧にはあまりならないと思います。それは、誰かの体験をただ「追体験」するだけだからです。
石田:すべて極論で「好き」か「嫌い」かで表せればいいのではないかと思います。「普通」は要りません。もちろん、普通のときもありますが、もっと感情をシンプルに揺れ動かした方が、実体験をしたと言えるのではないでしょうか。
安藤:あとは空気を読まずに本音を言えるかどうかだと思います。周りの人から見ると、異質なものかもしれないけど、その本音に従えるかが、自分自身の本質に近づくのではないかと思います。
——石田さんは大学生でありながらベンチャー起業家です。安藤さんは、複数の仕事をする女性フリーランサーです。前例の少ない働き方を実践されているお二人は、ご自身の働き方についてどうお考えでしょうか。正直に言って不安になることはありませんか。
石田:かなり自己中心的な言い方になりますが、好きなように生きていたいというのが本音です。
起業する前までは、その本音に従うことが許せなかったのが心苦しかったです。何かに縛られていました。でも、その周りの空気を吹き飛ばしてみると、案外自由に生きられるものです。
好きなように生きると、「安定的でない」と言われ、危険視されますが、それは論拠があるわけではなく、わからないことだから、不安になるだけではないでしょうか。
安藤:不安かどうかと聞かれたら、そりゃ「不安になることもある」と答えますよ。でもそれは働き方に限ったことではなくて、これだけ選択肢もあれば変化も早ければ、不確定な未来に不安を感じることは誰だってあると思います。
私個人で言えば、それでも自分が選んだ働き方ですから。不確定な時代に確かな正解がないのだとしたら、決まったやり方に囚われずに、自分自身を時代に「最適化」させてしまう。ソーシャルメディアを駆使する、セルフブランディングを実践する、身軽な「ノマドワークスタイル」を選択する、そして肩書や専門領域を決めずに、多様な仕事を手がける入り口をつくるといったように。
それは私にとっての「成功モデル」であって、一般的な正解ではありません。結局、一人ひとりが「成功モデル」を見つけ出すことが大事だと思いますし、結局は「好きなことを好きなようにやる」に行き着くのだと思います。
石田:好きなことを見つけられた人は強いですよね。結局、どんな壁にぶつかってもぶれないので。
安藤:私も、このような働き方で生きていくと決めたときは「大丈夫なのか」と疑われていました。「無理だ」と言われた事もあります。でも、自分のことが、自分では一番わかっていましたから。
石田:まとめると、中庸にならずに共感を生み出すためには「好きなように生きろ」ということですね。強い思いがあるからこそ、人に伝わるのです。
安藤:そうですね。そしてその思いが世の中にシェアされることによって、少しでも日本が面白い場所になればいいなと思います。
安藤美冬:
株式会社スプリー代表
1980年生まれ、東京育ち。慶応義塾大学卒業 後、(株)集英社にてファッション誌の広告営業と書籍単行本の宣伝業務経験を積み、2008年には社長賞を受賞。2011年1月独立。ソーシャルメディアでの発信を駆使し、一切の営業活動をすることなく、多種多様な仕事を手がける独自のノマドワークスタイルがTBS系列『情熱大陸』で取り上げられる。また、NHK Eテレ『ニッポンのジレンマ』では30代の若手論客として、フジテレビ『Mr.サンデー』ではゲストコメンテーターとして出演。『自分をつくる学校』の運営、野村不動産やリクルート、東京ガスなどが参画する新世代の暮らしと住まいを考える『ポスト団塊ジュニアプロジェクト』ボードメンバーのほか、日本初のスマホ向け放送局『nottv』でのレギュラーMCや連載の執筆、講演、広告出演など、企業や業種の垣根を超えて活動中。2013年春創刊のシングルアラフォー向け女性誌 『DRESS』では、「女の内閣」の「働き方担当相」を務める。著書に7万部を突破した『冒険に出よう』(ディスカヴァー•トゥエンティワン)がある。
公式ホームページ:http://andomifuyu.com/
Twitter:@andomifuyu
石田言行:
株式会社trippiece代表取締役
1989年9月18日生まれ。中央大学4年。学生NPO法人うのあんいっち元事務局長
trippiece HP:http://trippiece.com/home
Twitter:@ishidaian
Facebook:http://www.facebook.com/ian.ishida
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