節電の呼びかけがそこかしこで聞こえてくるようになりました。
「節電なんて面倒くさいし、クーラー止めたら暑いし、電気消したら不便だし…」
「節電」の持つ禁欲的な響きに、嫌気がさしていませんか?
そんなあなたにお勧めするイベントが、今回紹介する
『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』。
「究極の節電イベント」などと大げさなタイトルを付けた理由。
それは、イベント会場が
「真っ暗闇」だからです。
「暗闇の中での対話(ダイアログインザダーク)」と名付けられたこの催しは
暗闇のプロである視覚障がい者のアテンドにより、真っ暗闇の会場で遊ぶという非常にシンプルなイベントだ。
文字で書くと簡単なイベントだが、一度その会場内に足を踏み入れると
今までに自分が「真っ暗闇」という空間を体験したことがないことにまず気が付く。
「例えば寝る時でも、始めは真っ暗だけど、だんだん目が慣れてくるでしょ?だけどここではいくら目をこらしても、何も見えてこない。」
そうアテンドさんが言うように、会場内でどんなに一生懸命に目を見開いても何も見ることが出来ない。
人生初体験である「真っ暗闇」の空間内には、さまざまな仕掛けが施されている。
丸太の橋や水たまり、音の鳴るボールや、ブランコ。
最後には、お酒を買って暗闇で乾杯まで。
(暗闇で書いた短冊。季節に合わせてテーマを変えて開催している。)
詳しい内容は、参加してのお楽しみなので省略するが、
ダイアログ・イン・ザ・ダークに参加すると、今まで自分がいかに視覚に頼っていたのかがよく分かる。
同じグループで参加したキヌちゃん(写真右。会場中では参加者をニックネームで呼び合う)は
「目で見えない分、声を出した。助け合わないと歩けないから普段よりも優しくなった。」
と感想を語る。
今回アテンドを務めてくれた視覚障がい者の「ちーちゃん」は
「目は見えないけど、声で大体の性格や感情が分かる。今緊張しているなとか楽しんでいるなとか。」
「心と声はつながっているから。」そう教えてくれた。
自分の目の前に何があるか分からないので、まず触る。
遠くに何があるか確かめるために、耳をすます。
渡された飲物が何だか分からないので、匂いを嗅いで、味わってみる。
視覚があれば、すぐに分かる様々なことを、視覚以外の感覚で、ゆっくり確かめていく。
そこで感じるのは、子供の時のような冒険心や、隣の人の暖かい手触り。
そして、肩書も年齢も男女も一切関係ない、「ただの自分」。
日常生活の中で、無意識の内に外見の綺麗さにつられて、物事の中身を見ることが難しくなっていた自分を発見する。
例えば今、「原発依存」か「自然エネルギー」へのシフトかといった議論がある。
それを単なる目に見える「文字」として認識してはいないだろうか?
「原発」という文字が「自然エネルギー」という文字に変わったとしたら
今の生活のように電気をたくさん使ってもいいのだろうか。
戦後の経済成長はエネルギーの成長と表裏一体の関係で進んできた。
電気を使うことで便利になってきた私たちの生活。その反面で置き去りにしてきてしまったものは何なのだろう。
「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」は、単なる「視覚障がい」体験イベントではない。
視覚を遮断することによって浮彫になってくる、自分自身の存在、生き方、世の在り方について深く考えるきっかけを与えてくれる場所だ。
-難しい話はさておいて
ダイアログ・イン・ザ・ダークでは以前「婚活・イン・ザ・ダーク」と題した企画も開催したことがあるそう。
見た目から入らない恋愛。より人間性が試されそうでドキドキしませんか?
普段よりも近い距離で相手を感じられるのも「暗闇」のいいところ。
今年の節電デートはここで決まり!
ダイアログ・イン・ザ・ダーク
-1989年にドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケによって発案されたソーシャル・エンターテイメント。日本では1999年から開催されるようになり、これまでに約7万人が体験している。現在は渋谷区神宮前で常設を目指して開催中。