オーロビルに来て、約3カ月が経った。インドに来るのは4回目だが、オーロビルは、別世界のように感じる。生活に関わる多くのものが、環境や人権に配慮されており、地域で栽培された顔の見える有機栽培の生産物、伝統的な薬草を使った食事など、魅力的なものに囲まれている。オーロビル内で働く人たちも、笑顔とホスピタリティで溢れている。(オルタナS特派員=小川 美農里)
その中で、大きな影響力を感じるのは、教育の力だ。オーロビルでは、瞑想やヨガなど、精神性を高め人々の意識を変えるような取り組みが多くなされている。前回紹介したように、オーロビルには世界中から集まった約2300人の住人と、周辺住民、私のようなボランティアで構成されている。
オーロビルの創設者の一人のミラ・アルファッサ、通称「マザー」は、41年前に他界しており、 現在は、特定のリーダーや代表者はいない。このまちを維持し、発展させ続けるヒントは、人々の意識の中にあるといえる。
先日、私の働くセンター内でワークショップが開かれた。対象は主に、夜間の教育プログラムで小中学生と関わる大学生のボランティアだ。インドの多くの場所では4月が年度末のため、来年度に向けて、ボランティアがより結束し成長し合えるような目的で、このワークショップは開かれた。
センター発足当時にプログラムに参加していた中学生が、教える立場となって参加している。彼女たちと一緒に学べるチャンスだと思い、私も参加することにした。
ワークショップは、お茶を飲みお菓子を食べることから始まった。それから、尊敬する人と、尊敬する理由を発表し合う。マハトマ・ガンディー、マザー・テレサなど、インドで活躍した日本でも著名な人の名前が上がっていく。ほかには、悟りを啓いたとされる人の名前もあがり、インドらしさを感じられる。
自己紹介では、自分を表す言葉を紹介する。勇気、平和、内面的な成長など、謙遜の文化のある日本では出づらい前向きな言葉が次々と述べられた。
最後に、世界の経済の仕組みや貧困の起こる理由などを映像で学び、今、私たちにできることを考える時間を持った。その発表の中で、一人の大学生がこう伝えてくれた。「今日のワークショップを通じて、前向きな気持ちになれた。世界中で起こっていること、何が良くて何が間違っているのかを、多くの人たちに伝えていきたい。そんな気持ちを更に勇気づけてくれた」。
満面の笑顔で生き生きと話す彼女をみて、思わず、胸が熱くなった。彼女たちは、決して経済的に豊かではないが、心はとても豊かで、地に足をつけ、夢に向かって進んでいる。「Be the Change, if you want to see it in the world」とは、マハトマ・ガンディーの言葉で、私の座右の銘だ。
彼女たちこそが、changeそのものであると感じた。私自身の大学時代を思い出した。生意気にも「目標はありますが、夢はありません」と言った私に対して、恩師の先生は、こう言った。「あなたのような存在がでてきてくれたことが、私たちの夢なのです」。葛藤ばかりしていた私にとって、魔法のような嬉しい言葉だった。
これが、教育の力だと信じられる。オーロビルが、笑顔とホスピタリティで溢れているのは、多くの人々が、意識的に、より良い地域、より良い社会、より良い世界を目指して生活しているためともいえる。意識が変われば、自然と行動にも変化が生じるということを、こんなに実感できる場所はない。
オーロビルでは、日々、気付きと学びの連続だ。学びを深めながら、私自身が「the change」として活動していきたい。
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