フルッタフルッタ(東京・千代田)では、アマゾンの森林を再生する「アグロフォレストリー(森林農業)」の農産物からアサイードリンクなどを加工販売している。20代を代表して、オルタナSの記者が、ビジネスの第一線でグリーンエコノミーを実践するフルッタフルッタ・長澤誠代表取締役に、これからのソーシャルビジネスのあるべき姿についてインタビューした。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆)

写真奥が長澤代表


─アマゾンでアグロフォレストリーに触れ、感動したことがフルッタフルッタ創業のきっかけになったと伺っています。こうした話に刺激を受ける若者は多い一方で、起業に至る人は少ないと思われますが。

長澤:当時、私は食品会社に在籍しており、チョコレートの原料になるカカオの同属のフルーツを探していました。その活動のなかで、アマゾンの森林を伐採した農地から、大量の農作物が先進国へ輸出されていく現状を目の当たりにしました。

そんなときに、ブラジル北部のトメアスで、アグロフォレストリーに出合ったのです。森林をつくる農業と言われるアグロフォレストリーの仕組みを知り、農業という経済活動によって、森林を拡大させることができると確信しました。

でも、アグロフォレストリーでビジネスをするためには、市場開発をしなければならない。それをどのように行うのかを考えたとき、かつて勤務していた京セラで培ったベンチャースピリットを生かすことができると気付いたのです。

社会を変えるためにはビジネスを知ること

─アグロフォレストリーの農産物を使用したアサイードリンクを販売するうえで、あえて地球環境問題への貢献を積極的に謳っていませんが、「環境に良いから売れるわけではない」という現実を前に、葛藤はありませんでしたか。

長澤:当初は、私もアグロフォレストリーの素晴らしさを消費者に伝えたいという気持ちが強かったのですが、環境に配慮した製品という訴求では、消費者には響かないのです。

理念だけではモノは売れない。モノが売れないと経済は動かない。環境に配慮した商品をヒットさせるためには、消費者メリットを考えた商品の魅力を追求しなければならないのです。ビジネスを知らずして、社会を変えることはできないと思っています。

─アグロフォレストリーの農産物を使用した商品と、市場が求める商品を一致させるのは難しいのではないでしょうか。

長澤:たとえば、皆が食べているハンバーガーの食材の一部が、アグロフォレストリーの農産物に置き換えられていたら、商品の顔は何も変わらないので、市場が求める商品として存在することができる。

市場が求めれば、生産者はどんどんアグロフォレストリーで農作物をつくります。エコだから買いましょうではなく、買ったモノがエコにつながる仕組みをつくることが持続性につながると考えています。

−社会貢献思考や環境意識の高い若者の間では、ソーシャルビジネスへの関心が高まっています。これからソーシャルビジネスに挑戦する若者に求められるものは何でしょうか。

長澤:途上国の多くの人は、どうすれば収入を得ることがきるのか、何よりもその方法を教えてもらうことを先進国の我々に期待しています。

だから、まずビジネスの基礎を学んでほしいですね。 自分でモノを売って、自分でお金を稼ぐ力のない人は、インフラの整った環境でしか、役に立つことができない。

だからビジネスとは何たるかを理解していないと、理念倒れで失敗する可能性があるでしょう。

自然のメカニズムと経済をマッチさせる

─昨年開催されたリオ+20では、経済と地球環境の融合を提唱する「グリーンエコノミー」がテーマになりました。リオ+20に参加され、世界における「グリーンエコノミー」の潮流について、どんな印象を持たれましたか。

長澤:グリーンエコノミーを実践するために、どうあるべきかを議論するまでには至りませんでしたが、リオサミットから現在にわたる20年間の経済活動が誤りであったと認めた点は評価できると思います。

─リオ+20のジャパンパビリオンでは、農水省主催のセミナーで講演を行ったとのことですが、フルッタフルッタのビジネスモデルについて、どのような反応がありましたか。

長澤:同じく登壇していたFAO(国際連合食糧農業機関)のG商品の顔は何も変わらないので、市場が求める商品として存在することができる。

市場が求めれば、生産者はどんどんアグロフォレストリーで農作物をつくります。

エコだから買いましょうではなく、買ったモノがエコにつながる仕組みをつくることが持続性につながると考えています。

−社会貢献思考や環境意識の高い若者の間では、ソーシャルビジネスへの関心が高まっています。これからソーシャルビジネスに挑戦する若者に求められるものは何でしょうか。

長澤:途上国の多くの人は、どうすれば収入を得ることがきるのか、何よりもその方法を教えてもらうことを先進国の我々に期待しています。だから、まずビジネスの基礎を学んでほしいですね。

自分でモノを売って、自分でお金を稼ぐ力のない人は、インフラの整った環境でしか、「リオ+20」ジャパンパビリオンの農水省主催のセミナーにて、プレゼンを行うフルッタフルッタ代表・長澤 誠IAHS(世界農業遺産)プロジェクトの事務局長によると、これまでグリーンエコノミーを提唱する国連と民間企業の間には、大きな壁があったそうです。

だから、グリーンエコノミーを実践する企業があることを知って、とても感銘を受けたという言葉をいただきました。GIAHSは、伝統的農法や持続可能な農法などを世界農業遺産として認定しているのですが、この講演がきっかけになり、アグロフォレストリーの世界農業遺産認定に向けて動き始めました。

─グリーンエコノミーの普及に向けて、フルッタフルッタはどのようなビジョンを描いているのでしょうか。

長澤:アグロフォレストリーが、森をつくる農業と言われるのは、生物多様性のメカニズムをそのまま農業に取り入れているからです。

自然は、その多様性を保つことができれば自ずと再生することができる。だから、そのメカニズムと経済をマッチさせれば良いのです。

そのためには、自然資本を共同管理しなければならない。誰が共同管理を統括するのかという課題に対しては、行政にもかかわってもらいたいですね。

そして各産業がアライアンスを組み、分業で必要な原材料をアグロフォレストリーから調達する市場環境をつくりたいと考えています。

これが実現できれば、経済の力によって森林を飛躍的に拡大させることができる。これこそが、グリーンエコノミーと言えるでしょう。


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