「路上文学賞」とは路上生活者、つまりはホームレス生活を送る人々にのみ参加資格のある文学賞。今年で3回目になる路上文学賞は、作家の星野智幸さんと写真家の高松英昭さんらが主催、NPOビッグイシューが共催しています。
この文学賞は「ホームレス」と経験者のみに応募資格がありますが、このホームレス生活者には実に様々な人々が含まれています。
「路上生活をしている、または一度でも路上生活の経験がある方(生活保護を受けている方もok)、ドヤやネットカフェなどを寝場所にしている方、生活保護寮や自立支援寮に住んでいる方など、 広い意味でホームレス状態にある方。 」(路上文学賞2013「募集要項」より)
最近ではネットカフェ難民と呼ばれる若者のホームレスも珍しくありません。路上文学賞では、そうした広義のホームレスの方を対象に広く作品を募集しています。
しかし、路上生活者がなぜ「文学」と組み合わさるのでしょうか。そこには作家である星野さんの深い考えがあるようです。
…「ホームレス状態で生きる人にも、日常の生活があります。ホームレスにはホームレスなりの常識や共通認識、世界観があります。それを、自分たちに実感のある言葉で書くことができれば、言葉自体はつたなくとも、まごうかたなき文学作品となります。むろん、あまりに独りよがりな言葉で書いたら、まったく通じません。自分の言葉からスタートして、少し、相手の言葉に歩み寄るのです。
私は、多くの人に、そのような言葉を書けたときの充実や歓びを知ってほしいのです。それは自分を自分で認める歓びです。また読み手が、自分の常識をとりあえずおいて、自分たちに見慣れない言葉を読むことで路上の世界の感触を知るとき、純粋な驚きを感じるでしょう。それは世界が広がることの驚きです。…(「選者の言葉」より)
私たちが普段目を背けてしまいがちな路上生活者。しかし、彼らから紡ぎだされた作品には深い味わいがあります。文学を通して、ホームレス生活を送る人々と交わることのできる数少ない場所が「路上文学賞」なのでしょう。前回受賞作品が公式HPに掲載されていますので、興味のある方は是非ご覧になったら如何でしょうか。
なお、第三回の応募期間は3月いっぱいまで。郵送の他、持ち込み・メールでも受け付けているようです。詳しい応募要項は路上文学賞公式HPまたはブログで発表されています。(オルタナS編集部=大下ショヘル)