「地方創生」、そして「地域創生」への関心が高まっています。この取組みは日本の最重要課題の一つであり、既に様々な活動がスタートしています。地域を創生するには多様なプレイヤーの力が必要です。行政や企業といったセクターだけではなく、様々な分野からの参加による協働が必要です。そして、その重要なプレイヤーの一つとして大学が注目されています。(野村 尚克)

一方、視点を変えると、大学改革が進んでいます。その背景には少子化や18歳人口の減少が止まらずに定員割れをする大学が続出していること。そして、世界的な環境変化などがあります。そこで、地域の課題に取組む大学や世界的な研究を行う大学といった、これまで以上に役割を明確にする大学が現れています。こうした流れは現状や未来に対する真剣な問いからの回答であり、いまはまだ成果は少ないようですが、今後、大きく社会へ還元されるものだと思います。

いま、大学は全入時代を迎えています。私が大学生だった20年前とは違い、大学が高校へ積極的に営業に行く時代。そしてAO入試や奨学金の拡充など、新たな制度を取り入れる大学が増えています。そうしたなかにあって、大学による地域創生への取組みは始まっていますが、それでは「どのような取り組みを行っており、どういった教員や学問分野の構成で、どのようなプログラムを実施し、どのような成果を出そうとしているのですか?」と聞くと、ハッキリと答えられる大学はとても少ないです。

野村氏が手がけた、大学生が東北の魅力を伝える企画でワークショップする学生たち

野村氏が手がけた、大学生が東北の魅力を発信するポスター展示ギャラリーと学生たち

私は社会人になってから分野の異なる2つの大学院で学びました。そうした経緯から、友人や知人で大学教員をしている人がいます。そして、いくつかの学会や、仕事を通じて交流するようになった教員がいます。しかし、先ほどのような質問については、たいていの教員が悩みながら答えるのが実状です。そして、逆に大学が企業と協働するポイントについて。外部から見る大学の取組みをどのように思うかといったことなどを尋ねられます。

このようなことから見えることは、改革途中にある大学と教員がとても悩んでいる姿です。なかでも、組織に関するものは多く、地域創生は「大学全体として取組むものか?地域連携センターやボランティアセンター、学部や教員個人で取り組むものか?」「学長のトップダウンで進めるものか、教員や職員からのボトムアップで進めるものか?」「特定の学問分野で取り組むものか、学際的に取り組むものか?」「教員は研究者として助言のような形で関わるべきか、実際に中へ入ってプロデュースのような形で関わるべきか?」「教員の構成はアカデミック寄りか、実務家寄りにすべきか?」「授業は講義形式か、アクティブラーニング形式か?」など。これらは一部ですが、こうした課題に対して、どのような組織で、どういった戦略を持って活動すべきかを真剣に悩んでいます。

それでは、「参考となるような先行事例や他校の事例にはどういったものがあるのですか?」と尋ねると、これもハッキリと答えられる大学関係者は少ないです。それは地方創生が新しい取組みなのだから仕方のないことですが、しかし大きな問題点として、こうした取組みをする大学や研究者同士の交流が少ないことがあります。それは地域創生が一つの学問分野だけで解決できるものではなく、しかし、教員の多くは特定の学会で活動しており、そもそもこうした取組みについて包括的に議論や共有する場がないからです。

さらに、このような議論のなかで最も大きく抜けている点があることがわかりました。それは「学生はどのように思っているのか?」ということです。教育は大学が学生へ提供するサービス財ですが、その受け手である学生の気持ちや反応について、一部の感想的な回答はできても、しっかりとした定量的な回答などは非常に少ないのです。

これらの大学や教員の状況は私がこれまで交流してきた人たちに限定されるものであり、これによって全体の現状を説明できるものではありません。しかし、一つの参考資料としてみれば、そこに大学の問題点と苦悩する教員や職員の姿があることがわかると思います。

このような状況のなか、池田真隆さん(オルタナS副編集長)と話しをしました。池田さんは学生時代からソーシャルビジネスマガジン「alterna」のインターンに参加し、“若者による社会変革を応援するソーシャルメディア”をコンセプトとした「オルタナS」の立上げにも携わった若者です。大学卒業後はそのままオルタナSの副編集長に就任し、これまでにとても多くの若者のソーシャルアクションを取材してきました。おそらくこの日本で最も多くの社会的課題や地域課題に取組む若者の実態を知っている人物の一人だと思います。

話しの場ではこのような大学や学生の状況についてザックバランに話しました。そうしたところ、必要なのは「繋ぐ」ということではないだろうか。大学と地域、学生と社会人、首都圏と地方といった交わることが少ないものほど繋ぐことが必要なのではないか思うようになりました。そこでまずは私たちが年齢や職業を超えて連携することから始め、双方の異なった視点でこれらの活動について発信する場をつくろうと決めたのです。

「地域創生+大学 by. alterna×S」では、大学や学生の地域創生や社会創生へ取組む活動を発信します。発信にあたっては年齢や立場を超えた複合的な視点だけではなく、プロデュースをする立場やメディアの立場からの視点。そして、第三者として、各自の大学や教員が顔を出して話し難いことについても積極的に発信して行こうと思っています。それは、そうすることでこれらの課題について、冷静かつ客観的な把握を生み、真に解決できる流れをつくることができると思うからです。

これからはじまる野村尚克と池田真隆の両者プロデュースによる本活動にご期待ください。

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