「動物実験は倫理的に間違っている」この信念のもと、人々にその実態を知らせ、動物実験を行う企業や大学にその廃止を求める活動を続けてきました。つまり、動物に対して倫理的(=エシカル)であるべきだと人や社会に訴えるのが、私たちの活動(=ビジネス)です。

この活動は、しばしばこんな反論にさらされます――動物実験に反対するなら化粧をするな、薬は飲むな、医療も受けるな、肉は食べるな。人間の営みは、多くの動物の犠牲の上に成り立っているのだから、その恩恵を受けている以上反対する資格はない。

私たちの活動に賛同して周囲に広めようとする人のなかには、周りからこう言われて萎縮し、口を閉ざしてしまう人も少なくありません。

「動物はかわいそう。でも私はお肉食べているから」「家族が病気だから」とはじめから相手にシャットアウトされてしまうことも多々あります。動物保護運動の前には、この「オール・オア・ナッシング」の思考が大きく立ちはだかります。

たしかに、いま100ある動物の犠牲をいきなりゼロにすることは簡単ではありません。でも何もしなければ、100のままだけど、努力次第で100を50にすることはできるかもしれない。もう少しがんばればそれを20に、10に、そしてゼロに近づけていけるかもしれない。

実際に、菜食主義者でも医療否定者でもない多くの人が「動物実験を行っている企業の化粧品は買わない」というボイコットを進めたことが、資生堂が動物実験廃止を決断する決め手となりました。そこにはたしかに救われた動物がいるのです。

「完ぺきではない自分」だけど、「ベター・ザン・ナッシング」(何もしないよりはまし)のスタンスで、少しずつでも何かを実践することで何かが変わる、ということに気付く人が増えていけば、エシカルな社会の実現も遠くはありません。(寄稿・NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)理事 亀倉弘美)


NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)

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