オルタナは4月8日、シンポジウム「『たねや』の物語――しなやかで強い『レジリエント・カンパニー』への道のり」を開いた。不景気に耐え、危機後の回復力が高い「しなやかなで強い(レジリエントな)企業のあり方」をテーマに、『レジリエント・カンパニー』(東洋経済新報社)の著者ピーター D.ピーダーセン氏、和菓子の老舗たねや四代目社長の山本昌仁氏をゲストに話し合った。(オルタナS副編集長=池田 真隆)

登壇した、ピーター氏(左端)と山本社長(中央)、司会はオルタナ編集長の森摂が務めた

登壇した、ピーター氏(左端)と山本社長(中央)、司会はオルタナ編集長の森摂が務めた

レジリエント・カンパニーとは、危機に強く、耐久性があり、なおかつ事業環境の変化に対応し、社会から共感を集めている企業のことを指す。ピーター氏は、「企業がしなやかな強さ(レジリエント)を持てば時代を超えて残り続ける」と断言する。

ピーター氏はP&Gやネスレ、IBMなど20のグローバル企業を調べて、レジリエント・カンパニーには3つの特徴があると分析した。その3つは、利益以上の価値を使命に掲げ、社員と顧客を信頼でひきつけ、その企業をより所とさせる「アンカリング」、事業環境の変化に素早く対応でき、クリエイティブ性を発揮できる環境を整備しておく「自己変革力」、社会の方向性と自社の戦略のベクトルを合わせて、トレード・オフからトレード・オンを目指す「社会性の追及」。

レジリエント・カンパニーの強さは、株価推移で実証されている。ピーター氏は、独自に調べた20の企業の株価とスタンダード&プアーズ社の株価指標「S&P500」を比較した。比較した年は、リーマンショックの5年前の2003年末と5年後の2013年末。

比べた結果、10年間のスパンで、レジリエント・カンパニーはS&P500のリターンを約200%上回っていることが分かった。さらに、市場が落ち込んでいた2008年末にS&P500は2003年比で19%下がったのに対して、レジリエント・カンパニーは7%上げていることも分かり、不景気に対する耐久性の高さも証明された。

シンポジウムでは、ピーター氏が日本のレジリエント・カンパニーとして認めるたねやの山本社長も登壇した。同社は明治5年創業で、創業の地、近江の住民から愛されながら140年以上にわたり繁栄を続けてきた。

「和菓子を作れるのは、原材料があるおかげ」という精神のもと、山本社長は「自分で作ったものを自分で売る」という哲学を社員に伝える。農園作業も店舗作りも、業者に任せないで社員自らが行う。近江八幡に構えるラ・コリーナ近江八幡メインショップの周辺には、社員たちでドングリの種を植え、成長を見守り続けている。

接客方法もユニークだ。たねやでは、お店に来ていただいた感謝の気持ちをまず伝える。そのため、第一声は「いらっしゃいませ」ではなく、「ようこそ、近江へ」と挨拶するように指示した。味を伝えるときにも、マニュアルを参考にするのではなく、その和菓子を食べたスタッフの感覚で説明するようにしている。

地元住民や社会、環境に配慮した経営を続け、「次の世代が引き継ぎたがるような企業としてあり続けたい」と山本社長は話した。

◆レジリエント・カンパニー なぜあの企業は時代を超えて勝ち残ったのか(東洋経済新報社、著ピーター D.ピーダーセン)

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