ソーシャルメディア上で、地方の紹介映像が話題となっている。草津の紹介映像だが、その映像は約2カ月の間に、世界数カ国で200万回以上再生された。映像を製作したaugment5 Inc(オーギュメントファイブ)のプロデューサー&CEO井野英隆氏は、その土地に住む人との対話を心がけていると言う。(聞き手・オルタナS副編集長=池田真隆)
――どうして「草津」の紹介映像を作ったのでしょうか。
井野
:都内から、草津までは1時間半ほどで行けます。鎌倉と同じくらいです。しかし、同世代や学生たちは週末草津に行こうとはなかなかなりません。1時間半なので、日帰りで帰ってこれる範囲なのに。行ってみたいと思う人の割りに、草津に行ってきた人の数は少なかったので、そのギャップは狙い目だと思いました。
――地域の魅力をビジュアルで引き立たせるには、どういうところに着目していますか。
井野:観光用に用意されたものは、一度リセットしてから見るようにしています。ほとんどの場合は、旅行代理店や観光協会が若者用に作っていなく、高齢夫婦をターゲットにしているからです。
なので、ネットで検索できる場所に行くのではなく、人に会いに行くことを最も大切にしています。その土地に住むおばあちゃん、おじいちゃんに会いに行き、話しをします。普段のライフスタイルについてや、どうしてこの仕事をしたのかなどを聞きます。
――地元の方とお話して、映像にどう反映されるのでしょうか。
井野:そのような話しが直接映像に反映されることは少ないです(笑)。ただ、その生活を無視しているわけでもありません。その地方で起きている現状を知りたいから聞きにいくのです。
農業や林業、漁業などの1次産業で生きている人に、伝統を受け継ぐことについての話を聞きたい興味もあります。日本の一次産業や伝統で受け継がれているものは、場所を変えたり、見方を変えれば価値を発揮できるものです。
――昔から一次産業に関心はあったのですか。
井野:人生の中で考えているテーマの一つに、「素朴」があります。素朴とは、一つのことを生業として決め、続けることです。私自身、飽きっぽくて、一つのことを続けるのが苦手なので、職人型の人には憧れをいだきます。
――人口が減少していく中で、地方の魅力は何だと思いますか。
井野:地方への魅力は自然と高まっていくでしょう。若者も時間をつくれないわけではなく、観光旅行へ行くくらいのお金も持っています。
でも、地方の情報を知らずに、選択肢として検討すらできていない状況です。値段の安さなどの見せ方ではなく、その土地で生きる人の魅力を伝えて、行きたいと思わせる気持ちを高めてあげたほうがいいでしょう。
――ライフスタイルに関心があります。どうして人の生活に関心を持つようになったのでしょうか。
井野:80年代生まれの人は、余暇がキラーコンテンツでした。土日に家族が行くようなレジャー施設を多くつくってきました。
では、今の時代にディズニーランド的なものをつくるとすると、それは何か。それは、昔ながらの地域の暮らし方を体験することではないかと思っています。なので、地方の生活文化を資源として、時代にあった形で生かし、余暇にも仕事にも取り込めればいいと思っています。