「高台に避難してください」。2011年3月11日、庁舎に津波が迫る最後の瞬間まで、防災行政無線で住民に呼びかけ続け、ついに帰らぬ人となった南三陸町の若い女性職員のことを覚えている方も多いだろう。
防災行政無線とは、役場からの緊急放送を、屋外に設置したスピーカーを通して住民に伝えるための設備。東日本大震災では、南三陸町のように、防災行政無線のアナウンスで津波情報や避難指示を耳にした人が多数を占めた。
しかし反面、津波によるスピーカー倒壊や、無線発信機器のショートで情報伝達に支障が生じたところ、音量不足や、複数のスピーカーからの音声の重なりが原因で、内容が聞き取りづらかったところも多かったという。
そんな反省から、政府が国を挙げて取り組もうとしているのが「災害情報伝達の多様化」。防災行政無線やテレビラジオ、役場の広報車といった既存の手段に加え、コミュニティFM、ケーブルテレビなどのメディアや、ワンセグ、メール、ツイッターなどの携帯端末などあらゆるものを駆使することで、被害を最小限に食い止めたい考えだ。