「ほしい未来をつくるきっかけは、一人ひとりの身近なところにヒントがある」と、冒頭で述べる。「暮らしや働き方など、身の回りの課題を解決することが、社会をつくることになる。その先に、ほしい未来がある」。

「個人の暮らしや働き方」「社会」「未来」はそれぞれデザインすることができて、すべてつながっている。だから、個人の人生の課題を解決していけば、ソーシャルデザイナーになれて、「ほしい未来」を手に入れることができると説く。

鈴木氏は、この考え方を実践するために、2006年にウェブマガジン「グリーンズ」を創刊した。大手メディアに取り上げられる情報ではなく、地域や海外のソーシャルデザイン事例などを日々発信する。月間読者数は15万人に及ぶ。創刊年から、グリーンドリンクスというコミュニティ活動も毎月1回行っており、開催回数は80回、述べ参加者は5000人を超す。

ソーシャル領域に置いて、先進的なメディアとなり、全国にコミュニティを持つグリーンズだが、「順風満帆な人生を歩んできたわけではない」と鈴木氏は振り返る。

「グリーンズにたどり着いても、ずっと試行錯誤の連続。創刊してから、廃刊しかけたこともあるし、組織が空中分解したこともあった。働きすぎで、身体を壊し、家庭崩壊しそうになったこともあった」

しかし、それでも、「ほしい未来は誰でもつくることができる」ことを証明したく、走り続けてきた。ソーシャルデザインを追いかけ続けてきた男の波乱万丈なストーリーに心動かされる一作だ。


『「ほしい未来」は自分の手でつくる』(星海社新書)

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