国連の食糧支援機関である国連WFPは世界食糧デーの10月16日、「給食(お弁当)の思い出」をテーマにしたエッセイコンテストの授賞式を開催した。小学4年生から社会人まで、合計12410通のエッセイが集まった。最優秀作品に該当するWFP賞には、足立区立渕江中学校2年の大竹葉月さんが選ばれた。(オルタナS副編集長=池田真隆)

WFP賞を受賞した大竹さん

大竹さんのエッセイは、小学校3年生時に起きたある事件について書かれている。給食当番だった大竹さんのクラスメートが、ふざけて手についていた粘土をスープの中に入れた。クラス全員分のスープを無駄にしたことに対して、先生は激怒した。

給食の時間が終わると、先生がクラス全員を会議室に呼び出した。そこでは、途上国で飢餓に苦しむ子どもたちや紛争の悲惨さを伝えたDVDが見せられた。大竹さんは、「小さい子が機関銃を持っていたり、道路で寝て過ごす子どももいた。知らない世界に衝撃を受けた」と話す。

先生は泣きながら、訴えた。「みんなが無駄にした食べ物の分だけ死んでいく人がいる」と。この映像と先生の思いをきっかけに、クラス全員が話し合い、給食を残さずに食べていく決心をした。

「給食の量を減らさない。おかわりできる人はおかわりする。ドロ水を飲んで暮らしている子どもたちがいるのに、食べられる物を無駄に捨てるのはもったいない」(大竹さん)

一番伝えたいことは、「命の重さ」と話す。「日本の子どもたちは、貧困で苦しむ子どもや難民の子どもと比べて、命の重さを軽く受け止めている気がする。食べ物にも命はあるが、日本はたくさんの食べ物で溢れていて、食べられることへ感謝の気持ちが薄れてしまう」。

大竹さんはこのエッセイを、(自分より)小さい子どもたちに伝えたいと話したが、食への感謝を忘れてしまった大人たちにこそ響くのではないだろうか。国連WFP協会の理事を務める御立尚資さん(ボストンコンサルティンググループ日本代表)は、「論理に頼る自分を省みつつ、飢餓を減らしていく上での感情の大切さを再確認させていただいた」とコメントした。

本エッセイコンテストは今年で10年目で、応募1作品につき給食1日分に充たる30円が3社の寄付協力企業から寄付される。今年は、総額1116900円(1社372300円)が集まり、37230人に給食が届けることができる。


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