一人ひとりの市民がリーダーシップを持ち社会変革運動を成し遂げる学問が日本にも上陸した。仕掛け人は、ハーバード大学ケネディスクールで学び、今年9月に帰国した鎌田華乃子さんだ。その学問は、オバマを大統領にした手法として知られ、組織メンバー全員をリーダーに変える。(オルタナS副編集長=池田真隆)

コミュニティ・オーガナイジングを日本に広める鎌田さん

コミュニティ・オーガナイジングとは、ハーバード大学のマーシャル・ガンツ博士が、「一人ひとりがリーダーシップを発揮し、組織を形成し牽引していくための手法」を学問的に系統立てたものだ。

ガンツ博士は、2008年の米国大統領選挙でオバマ大統領の選挙参謀として、コミュニティ・オーガナイジングの手法を用いた。普段投票に行かない若者や黒人層を動かし、初の黒人大統領を生み出した変革者だ。

その手法は、5つのリーダーシップの要素から構成される。「ストーリーテリング」「関係構築」「チーム構築」「戦略立案」「アクション」である。

◆ストーリーテリング
人が行動を起こすときは、必ずストーリーが生まれる。無関心や恐れから動かないでいる人を動かすには、まず心を動かすことが必要となる。自分が行動した理由を話し、聞き手の共感を獲得し、「私たち」のストーリーとして伝えます。

◆関係構築
自主的なボランティア活動を行うためには、メンバー同士の信頼関係構築がカギとなる。金銭・雇用関係がない中で、ボランティア活動を続けていくには、共通の目的を持ち、信頼し合い、お互いに成長できる関係が必要である。1対1で向き合うことが重要となる。

◆チーム構築
活動を推進していくためには、コアとなる数人から10人程度のチームが重要となる。多様性のある性格、スキル、ネットワークを持つ人を集め、共有の目的の下に動けるチームをつくる。

◆戦力立案
社会のシステムを変えたり、課題を解決するためには、ステークホルダーを分析し、状況とリソースをどのように使って戦略を立てるのかが重要となる。

◆アクション
社会課題の解決は少人数ではできない。アクションをともに起こすコミットメントをつくっていくこと、楽しく、かつ実際に社会が変えられる、やる気が出るアクションを設計することが欠かせない。

この手法を日本に持ち込む鎌田さんは、2011年7月から2012年5月まで同大学でガンツ博士に学んだ。9月に帰国し、この手法で社会変革を起こすためのNPO法人を申請中だ。

鎌田さんの問題意識は社会人として働く中で生まれた。外資系の環境コンサルティング会社に勤務し、日々大手企業で働く人と交流していた。そこで感じたのが、「どこか疲れている」といった印象だ。

大企業で働く人たちが元気がなく、「どうせ自分一人が動いても変わらない」と諦めてしまっていては、社会は変わらないと感じた。
企業活動で社会を変えていきたいと思いコンサルタントとして生きていたが、企業を通してでは、根本的に社会は変わらないと実感した。根本的に変えるためには、市民が動かないといけないと決意し、会社を辞めて、留学した。

■社会に無関心な若者を巻き込みたい

鎌田さんは、社会に対して、無関心な若者たちを変えるためには、ロールモデルを見せていくことが必要と考える。「大人たちが社会を変えている姿を見れば、若者たちも変わっていくはず」。

留学中、鎌田さんはNYの公立高校生と一緒に、教育変革や地域保安をしていた。社会運動が盛んな米国でも、高校生たちは、「どうせ私たちでは社会は変えられない」と諦めていた。しかし、活動をしていくに連れて、居場所と同じ志を持つ仲間たちと出会い、社会を変えていけると実感していった。

今後、鎌田さんは仲間とNPO法人を設立し、米国で学んだ手法で日本の若者たちを変えていく。私立大学と協力し、コミュニティオーガナイズを教える。キャンパス周辺地域を良くしていくために、座学とフィールドワークで学ぶ。

コミュニティ・オーガナイジングは、誰のための学問でもあるが、特に若者たちに効果がある。「変えられえるか分からないけれど、変えてみようと思える勇気が必要。若い人にはその思い切りの良さがある。目を輝かせて、学びたいと言ってくれるのはいつも大学生や院生。そのような人に会うたびに、社会を変えていく原動力は若者だと実感している」(鎌田さん)