フランスのパリ市長選挙が3月9・16日に実施される。12年続いたドラノエ・パリ市長の後任には、女性候補者も出ており、史上初の女性市長になるのではと注目を集めている。そんな中、筆頭候補にも選ばれた、前環境相ナタリー・コシウスコ=モリゼ氏が、驚きの都市再開発プランを提示した。(オルタナS特派員=伊藤由姫)

パリには現在16の廃駅が存在し、ときに映画の撮影に使われることこそあれ、多くはホームレスをはじめとする不法占拠者などが出入りする場所になっている。そのため治安の悪化への影響も少なからずあるとして、ナタリー氏はその廃駅をエンターテイメント、スポーツ施設にする計画を打ち出した。

すでに建築家や都市計画家とタッグを組み、デザイン画も発表されている。そこには白を基調としたデザイン性に富んだプールや、きらびやかなライトが特徴的なナイトクラブ、広く縦長い形状を利用したアートギャラリーなどで、ありきたりな施設にしたくないというナタリー氏のこだわりがみえる。

廃駅や橋の下の空間などのデッドスペースを利用した取り組みは、世界各国で行われている。日本でも、1912年に完成し、後に交通博物館にもなっていた「万世橋駅」が、2013年に周辺エリア活性型商業施設「マーチエキュート神田万世橋」として70年ぶりによみがえった。

このように、都市のデッドスペースの有効利用はめずらしくない。しかし、ナタリー氏がパリ市長に当選し、このプランを実現した場合、その内容は世界的にみてもインパクトが大きく、革新的な取り組みになるだろう。

パリ市長は、大統領に次ぐ要職とされており、対外的にも首相より知名度が高いのが特徴である。史上初の女性市長誕生として話題だが、こういった政策などの観点からもこのパリ市長選に注目したい。