復興支援情報に特化した東北復興新聞が発行した『3YEARS 復興の現場から、希望と愛を込めて』(A-Works)が話題となっている。2月26日に発売すると、各種メディアに取り上げられ、11日現時点でアマゾンの「社会一般・災害」分野で1位を記録している。著者の本間勇輝さんは、「支援の必要性を訴えるのではなく、面白い取り組みがあるから訪れてほしいと願いを込めた」と思いを話す。(オルタナS副編集長=池田真隆)

東北の今とこれからが記された一冊

同書の一番の魅力は、東北復興に取り組むイノベーター15人のインタビューを紹介した章だ。語り部として南三陸町で活動する高校生、相馬市の復活に挑む漁師、いわき市の教育委員会で働く58歳など業種も世代も異なるが、それぞれの立場から行動を起こしている。

たとえば、いわき市の教育委員会で働く佐川秀雄さんは、東日本大震災を教育でどのように扱うのか考えていた。いわき市の中学校には、原発事故の影響で双葉町をはじめ多くの近隣地区から中学生が避難していた。

「原発事故で家族や友達と離れ離れにされた子どもたちのために、今までのカリキュラムだけで本当に良いのだろうか」――悩んだ末、佐川さんは、既存の常識にとらわれない授業を次々に展開した。

中学生には難しい英語劇への挑戦や、市内の生徒会長を集めたリーダー合宿など、子どもたちのコミュニケーション力・創造性を高めることを狙いとした。教育分野に限らず、東北では農業・漁業・街づくりなどの分野でイノベーションが起きている。そう感じさせてくれるのが本書だ。

避難者数やがれき処理の進展など、震災発生から3年が経過した今の復興情報に加えて、地元住民お勧めの観光スポットなどを集めた食べ歩きガイドも掲載している。数字だけでなくイラスト付きで紹介しているので、読みやすい。

東北復興新聞は2011年10月に発刊され、毎月4000部を無料で配布している。今年4月から季刊に切り替え、ウェブを中心に毎日更新していく予定だ。

気仙沼唐桑で6次産業化事業に挑んでいるNPO法人ピースネイチャーラボに取材する本間勇輝さん(右端)

本間勇輝さんの妻・美和さんが編集長を務め、夫婦で東北に足繁く通った。事務所は東京だが、これまでに取材で訪れた回数は100回以上だ。東北のために力になりたいと、学生インターンやプロボノも集まり、編集作業に協力する。

大震災から3年、本間さんは、これからの復興に求められることは、「個人とつながって支援していく形」と話す。「東北で人と触れ合い、その友達のために何ができるのか考える。そういう人が増えていけば、東北が盛り上がっていくはず。東北にはそのような変革者を受け入れるポテンシャルがある」。

『3YEARS 復興の現場から、希望と愛を込めて』
東北復興新聞