震災復興における企業と被災地の関わり方を考えるための「みちのく復興事業シンポジウム」が3月14日(金)、電通ホール(東京・港区)で開催され、企業からのべ124人が参加した。(寄稿・熊崎未奈)

シンポジウムは2部構成で行われ、第1部では「みちのく復興事業パートナーズ」による震災復興の先行事例が紹介された。「みちのく復興事業パートナーズ(以下、パートナーズ)」とは、NPO法人ETIC.と企業7社による企業コンソーシアムで、被災地への企業社員派遣や、企業人と被災地で活動する復興団体のリーダーが共に東北の課題に対して知恵を絞る研修会(「みちのく創発キャンプ」)、企業人と被災地のリーダーの出会いの場づくり(「みちのくサポーターズミーティング」)などを行っている。

■震災復興の現場は、企業にとっても学びの機会

第1部の事例紹介で登壇した東芝の社会貢献担当・山下剛志氏は、「みちのく創発キャンプ」に参加した際を振り返り、「NPOや被災地が抱える問題は複雑だったが、企業人の日常のノウハウや経験が解決のために役立つことに気づいた」と語った。また、「企業人にとっても学びの機会になった」と言う。

同じく登壇者で損害保険ジャパンからの社員派遣を受け入れた「一般社団法人福島復興ソーラー・アグリ体験交流の会」の半谷栄寿氏は、「派遣は、企業人にとっても創業期を味わう価値ある体験になったのでは」と振り返る。イノベーションやビジネスチャンスの「種」は東北にたくさんあり、それらを体験することで、大企業でのイノベーションに活かせるのではないか、と半谷氏は語った。

■CSRはもはや、「社会貢献をする」部署ではない

第2部ではソフィアバンク代表・田坂広志氏とジャーナリスト・津田大介氏によるトークセッションが開催され、熱い議論が繰り広げられた。津田氏は、企業による震災復興について、「社会貢献を『してやっている』のではなく、現地の人たちと『事業を共同開発するんだ』という意識が必要」だと話す。

トークセッションに出演した田坂氏と津田氏

田坂氏も、「魂を込めて、本業を通した被災地支援をすべき」と語った。さらに、日本企業のCSRについては、「これから最も重要で戦略的な部署になる」と言い、「本業のあり方すら転換できるような部署になるべきだ」と熱く語る場面もあった。

シンポジウムに参加した味の素社会貢献担当部長・前原誠一郎氏は、「CSR担当者は会社の中では孤独。この機会に悩みを共有できた」と言う。田坂氏と津田氏によるトークセッションについては「自分たちの活動に理論付けをしてもらい、勇気と使命感が湧いてきた」と語った。

同じく参加者の大槌復興刺し子プロジェクト・内野恵美氏は、「企業が本業を通して支援すべきという言葉には納得した。刺し子プロジェクトもビジネスとして成り立たせて、復興を進めていきたい」と意気込んでいた。

パートナーズの立ち上げ時から中心となって活動してきた電通社会貢献部の中村優子氏は、「今日のシンポジウムはパートナーズ各社にとって、はじめの一歩」と語り、「今後、どのように実績のクオリティをあげていけるかが大事」と期待を語った。

震災発生から3年が経ち、復興モードが薄れていく中で、企業による新しい震災復興の形、そして社会貢献の形が今後どう変化していくのか、注目だ。