2008年12月に始まり、年を越したイスラエル軍によるパレスチナ・ガザ地区への攻撃では、1400人の犠牲者が出た。ガザ南部の農業地帯ゼイトゥーンに住むサムニ家の子どもたちは、一族が一度に29人も殺された。3週間に300人以上の子どもたちが犠牲になり、家や家族を失った。攻撃直後に現地に入り、大きなショックを受けたジャーナリストの古居みずえさんは、これを取材し、ドキュメンタリー映画としてまとめた。それが、「ぼくたちは見た ガザ・サムニ家の子どもたち」(2011年制作/日本/カラー/86分/DVCAM/ステレオ)だ。(今一生)
古居さんは、1993年からガザ地区の難民キャンプに生まれ育って暮らしている女性を取材した500時間の映像をまとめた映画「ガーダ〜パレスチナの詩〜」を監督している。
本作では、理不尽な運命の中でも精一杯今日を生きていこうとする子どもたちを描いた。空爆で建物が壊されたがれきの中をのぞき、一人ひとりの人間の顔を見た子ども。戦闘後から笑わなくなった子どももいる。
封鎖されたガザでは、物資も少なく、日々の食事の支度もままならない。それでも、家族で食卓を囲み、瓦礫のあとで遊びながら、子どもたちはたくましく生きていく。
「ぼくたちは見た」は2011年の劇場公開以後、日本全国で自主上映会が相次いでいる。映画に描かれた子どもと同世代の若者が敏感に反応しているようだ。古居監督は言う。
「撮影当時に12~13歳だった子どもたちを描いているので、日本でも中学生から大学生の年頃の子に見てもらうと、『自分がこの土地にいたらどうするだろうか』と関心を持ってくれたり、子どもたちの心情に共感してもらえました。
この映画を作った後、2012年11月から去年の冬まで二度目の大掛かりな侵攻があり、取材に行ったところ、「映画で描いた子どもたちは逃げて無事でした。それでも、2度目の侵攻でまいっている子もいて、女の子3人はしっかり受け答えが出来ていたのですが、1人の男の子は2009年の傷をずっと引きずっていました」。なお、本作の自主上映会は公式サイトからメールで打診でき、学生からの上映依頼も受け付けている。
・映画「ぼくたちは見た ガザ・サムニ家の子どもたち」
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