光のない空間を視覚以外の感覚を使って体験する常設イベント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク 対話のある家」が、グランフロント大阪(大阪市北区)で始まって1年。積水ハウスの情報受発信・研究施設「住ムフムラボ」内につくられた真っ暗闇の空間でこれまでにさまざまなプログラムが開催され、既に約5000人近くが体験している。今回、筆者も触感や声などを頼りに何も見えない「家」を探検した。(オルタナS関西支局特派員=板谷 祥奈)
「こっちに歩いて来られますか。怖がらなくても大丈夫ですから」。声の聞こえた方向へ壁をつたってこわごわと進むと、アテンドの「けいたん」と名乗る優しい声の女性は、暗闇でも難なく私の手をとりすたすたと誘導していく。
彼女は「たえちゃん」と一緒に私たち参加者をサポートしてくれた。2人は視覚障がい者で、目を使わずに生活する暗闇のエキスパートだ。環境によって得意不得意は反転するということを実感する。
住ムフムラボの久保新吾館長(50)は「明るいところで目が見えることも、暗いところでも普段通りに振る舞えることもその人の特徴に過ぎない」と語る。
ダイアログ・イン・ザ・ダークは1988(昭和63)年にドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケにより考案された。暗闇でのコミュニケーションを土台とした「ソーシャル・エンターテインメント」であると同時に、視覚障がい者の雇用を生み出すプロジェクトでもある。全世界で700万人以上が体験し、視覚以外の感覚をフルに使うことで普段は気付かないことに気付く。
私の場合、暗闇は不気味で怖いというイメージがあったが、「対話のある家」では人の温かさを普段よりも強く感じた。70分の間、参加者とアテンドは家族としてニックネームで呼び合いながらさまざまなミッションに取り組む。
最初はぎこちなかったものの、暗闇では不思議とすぐに距離が縮まり最後には信頼感も生まれていた。暗闇では見た目で相手の人柄を決めつけたり、相手の顔色をうかがって遠慮したりすることがなくなるからだという。
アテンドのたえちゃんは「暗闇で気付いたことを明るい世界で生かしてもらうことで、目を使う人と使わない人との隔たりがなくなっていってほしい」と話した。
「対話のある家」では7月3日から夏休み特別プログラム「僕たちの夏休み」が開催されている。田舎のおじいちゃんの家に帰ったような懐かしい体験ができるという。
開催場所:グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル 4階積水ハウス「住ムフムラボ」内
開催期間:2014年7月3日~8月4日
開催時間:午前11時より 1日5回開催(完全予約制)
料金:大人3,500円 学生2,500円 小学生1,500円
ダイアログ・イン・ザ・ダークHP:
http://www.dialoginthedark.com/